とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

たくましい人間に育てるには

 

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娘の涙とたくましさ

家族五人で夕飯を食べている時のこと。

「保育園で、お友達が意地悪したの。」と、5歳娘が目に涙を溜めながら話し始めた。詳しく聞くと、ごっこ遊びで今流行りのアニメについて娘があまり知らなかったことで、仲間に入り損ねたそう。おさるのジョージや、ひつじのショーンをよく家族で見るが、それ以外は確かにあまり見たことはない。流行りのアニメも一緒に見た方がいいのかなと思った。しかし、娘はそのアニメがあまり好きではないようなので、それならそのアニメごっこには仲間に入れなくても良いだろうと、娘と話した。

 

義務教育の間はもちろん、大人になってからも、こうした人間同士には多少のすれ違いやトラブルは必ずある。そうしたときに自分の考えを曲げてまで、トラブルが起こらないように周囲に迎合することがどれだけ危険かは、迎合したことがある方はよくお分かりだろう。わざわざトラブルを起こす必要もないが、育った環境が違う人間同士で全くストレスなく過ごせることの方が不思議である。そうした大なり小なりのぶつかり合いの中で、人間性は磨かれる。

 

たくましさの学問

レジリエンスという心理学用語がある。これは、逆境におかれたときに適応することや、そこから立ち直ることを指す。逆境とは、虐待、貧困、身体的ハンディキャップ、依存症などの状態を指す。いわゆる、たくましさ(あるいは、したたかさ)と同じ概念だ。そういったネガティブな状況に適応して、そこから立ち直ることは容易でない。それが子どもならなおさらである。特に、子どもの場合、逆境におかれたときにそこから立ち直るために必要な大切な要素の一つに、ある条件を満たした成人の存在が不可欠である1。その条件は、社会的に認められた立場にあり、問題解決能力に長けていることである。学校教員や、養護教諭、小児科医などがこうした条件を満たす成人とならなければならない。いくつか目を通したレジリエンスについての論文には、こうした成人は competent ”優秀”である必要があるとか、perceived efficacy valued by self and society "社会的に認められた立場"である必要があると書かれている。 確かにそれも大事かもしれないが、何度でもいつでも支える覚悟を持ったカッコいい大人であれば事足りるのではないかと、個人的には思う。一言でいえば、"見捨てない"。

 

良い子でいることが、たくましいわけではない

最近は育児について記された本がたくさんある。その中でも、レジリエンスという言葉について書かれたものも多い。多くのそうした本ではレジリエンスという言葉が望ましいものとして捉えられているが、実際はそうではない。レジリエンスの中には、社会に適合した形のものだけでなく、その状況から逃げること、人を騙したりするずる賢さなどの社会に適合しない形のものもある1, 2。これは大切なことで、辛い状況におかれた子どもが好ましくない特性を獲得してしまうこともレジリエンスの一つなのだ。大人が扱いやすいように育てることが子育てではない。その子が持つ特性を尊重し、それに合わせてサポートするのが最も求められる姿勢であり衝突の少ないやり方であろう。自分の娘や息子には人に嘘をついては欲しくないが、したたかさを誠実さに兼ね備えてほしいと思う。

 

私は盆栽が好きではない。その松が大きく育ちたいのに小さな鉢で小さくまとまらせたり、枝が自由に伸びていく方向を勝手に違う方向に曲げてみたり。自然は誰かを満足させるためにあるのではない。人間もしかりだと思う。親や学校の先生が子どもを扱いやすいように変えてしまうのではなく、それぞれの特性を見極め尊重しサポートすると良いだろう。扱いにくいのは、特性を理解していないからであることが、多くある。

 

 

 

参考文献

  1. Hornor G. Resilience. J Pediatr Heal Care. 2017;31(3):384-390. doi:10.1016/J.PEDHC.2016.09.005
  2. Masten AS, Best KM, Garmezy N. Resilience and development: Contributions from the study of children who overcome adversity. Dev Psychopathol. 1990;2(4):425-444. doi:10.1017/S0954579400005812

 

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初出掲載: 2020年 2月 15日