ポイント
・第二次世界大戦後、都市に人口が集中してきた。
・それにともない、周囲に血縁者がいない核家族が増加した。
・母親(一番の養育者)が育児を一人で担う過酷な状況に置かれていることが多くなっている。
・ヒトは進化の過程で、所属する集団の複数のメンバーで子育てがなされてきた。 これをアロマザリングという。
・虐待や発達の心配を抱える子どもの増加は、家族の在り方自体を見直すきっかけとなる。
我が家は妻の実家の近くに住んでいる
私は地方政令指定都市の医学部を卒業後、その大学小児科の医局に所属しております。そのままその地方に住み、いまは主に博士課程大学院生として学びながら、ときどき小児科医として働き食い扶持を稼ぐという、その日暮らしの生活をしています。6年制薬学部を卒業後すぐに医学部へ編入してさらに5年間学んだあと、すぐに大学院に入学していま5年目なので、6+5+5で16年も続けて大学に通い続けていることになります。人生のほぼ半分を大学で過ごしています。いずれも国立大学に所属してきたので、税金で学び研究させていただいているので、世の中に還元できるよう、がんばります。話がずれました。私の妻の実家は、いま我々が住む地方都市と同じ都市圏を構成する中核都市にあります。車で30分ほどの距離です。ありがたいことに、ほぼ毎日といっていいほど、義母が我々の家に来てくれ、実家のほうにお邪魔しております。妻の実家が近いということは、私が当初想像していたよりもかなり助かっております。後輩小児科医やスタッフが恋の相談をしてきた際には、かなり高い確率で、「妻となる人のご実家に近いほうが、子育ての時に良いですよ。」と、情けないアドバイスを行っております。だってほんとうにそうなのだから、仕方がない。
都市への人口集中と、核家族の増加
日本では、第二次世界大戦後に急速に経済成長してきました。これは、都市を中心に発展した産業を、地方からの人材の流れにより維持そしてさらに発展させてきた影響が強くあります。私はもともと瀬戸内海に浮かぶ島の出身ですが、高度経済成長期にはその島から多くの優秀な人材が都市へ出向き、社会の発展に寄与したのだと感じさせられるエピソードが多くあります。大手建設会社の鹿島建設の、元重役の方とたまたまお知り合いになり、お食事をさせていただくことがありました。その方は、私が島の出身であることをしると、その島の出身で鹿島建設でよい働きをした方々を紹介してくださいました。これは、都市への人口集中を象徴するエピソードとして記憶されています。以後、地方に生まれた若者は、よりよい就職先を選択するため都市へと移り住みました。そうした若者同士が見ず知らずの土地で結ばれ、その結果、周囲に血縁者のいない核家族が増加していきました。
母(養育者)の負担
ワンオペ育児という言葉が多く聞かれるようになりました。もともとワンオペとは、ワンオペレーションの略で、ひとりですべてこなさなければならない状況のことを指します。様々な業務に対して使われる言葉ですが、特に育児と結び付けられて生まれたワンオペ育児という言葉には、他とは異なる重みがあります。ここに、内閣府のワンオペ育児に関連するサイトと資料があります。いずれも、夫の家事・育児負担が少ないことへの言及が主体となっております。「ちょっとまってくれよ!俺たち子育て世代の夫たちも、けっこうがんばっているんだぜ!」と、私は子育て世代の夫を代表して宣言したい。しかし、母親が抱える負担が大きいことは、事実として受け止めなければなりません。実際に、第4子の産後、妻がいない家で子供3人と生活することがこんなに大変だったとは、思いもよりませんでした。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/kokufuku/k_4/pdf/s1.pdf
朝から腹減ったで起こされ、朝ご飯を準備したかと思ったらすぐ昼飯。午後からは長女と次女の習い事の送迎。そうこうしていると晩飯。宿題もやっとかないと。夜は絵本を読まないと。あ、明日の飯の材料ねえじゃん。洗濯物たまってんな。おっと、この仕事の締め切りが明日!?もう無理じゃん。
って日々を、妻は自分の仕事をしながらやってくれていたのだと、短期間ではあれども
自分がやってみて、初めて気づきました。やっぱ実際にやってみないと、分からないなあと思います。これからの働き方改革により、どちらのパートナーにとっても、家事・育児にかけられる時間が増えることを期待しております。
ヒトはもともといろいろなメンバーで助け合ってきた
アロマザリングという言葉をご存じでしょうか。早稲田大学の根ケ山教授の記事が、とても分かりやすかったです。アロマザリング allomathering は、allo=他の + mothering=母のような行動、養育行動 という2つの言葉が合わさった単語です。つまり、母ではない人による養育行動のことを指します。
人類はもともと、集団で生活を営み、複数のメンバーによって協力して子育てを行ってきました。そうした社会では、血縁者や非血縁者で構成されるメンバーにより養育行動を行います。このようにアロマザリングが機能する社会では、養育者である母親同士の負担が少なく、子どもが多様な経験ができます。アロマザリングの欠点としては、核家族の最大の利点である個人のプライバシーが制限されるところでしょうか。プライバシーが最大化された核家族に育った我々の世代は、アニメのサザエさん一家のように3世代にわたって同居する、昭和な家族の在り方にはもう戻れないかもしれません。しかし、現在のような孤立した核家族を背景とする育児に関する問題点に触れるたびに、その在り方について考えさせられます。
https://www.okinawa-nurs.ac.jp/wp-content/uploads/2020/10/22-6-higa-owan-taba.pdf