とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

またおむつにうんちをもらした!

またおむつにうんちをもらした! 

 

ポイント

  • トイレットトレーニング開始の目安は2,3歳だが発達に応じて変わる. 
  • 自分で排泄できるようになる発達の過程を知ることで,親の余計な焦りを減らす. 
  • トイレへの誘導,慣れ,トレーニングパンツの順に進める. 

 

息子がうんちをお漏らし,よく分からず怒る父

あと数か月で4歳になる長男の太陽くんは,外遊びが大好きなげんきな男の子だ.自分の足で支え進むタイプの自転車に乗って,素早く移動することが最近の得意技だ.彼はまだ,おむつを着けている.トレーニングタイプではない.そのせいか,おしっこもうんちも,まだトイレでできない.おしっこはまだしも,うんちをしたあとのおむつを替えるのは難儀だ.彼の2人の姉はみな2,3歳時点ですでに自分で排泄ができており,その経験が私に不足しているから,尚更その作業がいまだに腑に落ちていなかった.本人に理由を聞いても,「よくわからない」というばかり.「次はがんばってみる」と言うものの,失敗してばかり.4歳になってから排便がコントロールできていないと,いよいよ心配だとばかり考えてしまう.つい先日も,うんちをおもらししてしまったから,おむつを替えて欲しいと本人が申し出たので,「うんちが出そうになったらトイレに一緒に行こうと約束したばかりじゃないか」と言ってしまった.結局妻がおむつを替えてくれることになった.その日の夜は,なんだかもやもやしてうまく寝れなかった.小児科医なのに,排泄の発達についてまるで知らないことが悔しかった.もしかしたら自分の子どもにひどいことをしてしまっているのでは,という考えが頭の中をずっとぐるぐるとしていた. 

 

子どもの排泄の発達について調べる父

小児科を受診してくださる排泄の問題の多くは,夜尿症である.その診療の経験は少なからずあるのだが,排便のコントロールがうまくできないことを問題に受診された方の経験は,恥ずかしながらなかった.そのこともあり,これを機会に,自分の子どもにちゃんとした対応ができるように勉強しようと思ったので,調べてみた. 

 

子どもは尿意や便意を最初からは認識できない.それらは最初から備わっているものと思っていたので,恥ずかしながら私は驚いた.尿なら膀胱,便なら直腸がその排泄物の一時的な貯溜部であるが,そこに排泄物が溜まったことを脳へ伝えることでそれを知ることができる.さらに,延髄という首のあたりにある脊髄の部位により,尿や便の排泄を抑制するという一連の行動を行う.そういった一連の神経学的な発達が得られはじめるのが,1歳ごろでありその完成はおよそ2歳半まで気長に待たなければならない. 

 

反省する父

体の準備が整ったら,次は実際にトイレで排泄をする練習によりそれを身につける.1まずはトイレに備わっている道具に慣れる.補助便座を使用するご家庭が多いと思うが,そこへ座る時に,どう座ると,いきみやすいかを親子で確かめる.次に,時間を決めて座ることを習慣化する.朝食後に排泄する場合が多いが,落ち着いて排泄に取り組める夕方でも良い.目的は習慣化なので,出なくても,成功しなくても良い.ただトイレという空間に座ることに慣れることを助ける.それらと並行して,トレーニングパンツを試す.おむつの性能が向上した現代において,排泄後の不快感は覚えにくいものになってしまっている可能性がある.トレーニングパンツの材質は紙と布があるが,外出先か否かなどでうまく使い分ける.一般的に3歳後半までに多くのお子さんがトイレットトレーニングを終える.そうした事実を前に,必要以上に焦ってはいけない.私のように,不要な叱責を繰り返してしまい,子どもの自尊心を傷つけてしまってはならない.叱りつけてできるようになるものではないことを知ることがまず肝要だ.確立された方法に則って,子どもの発達を助け自立を促すことができるように多くの親御さんに役立てば幸いである. 

 

開き直る父

なお,そうした方法に従って進めていってもうまく排泄管理が困難である場合もある.そのときは,病気が隠れている場合があるので一緒に考えさせてもらえるよう小児科へご相談いただければ良い. 

 

知ったかぶる父

欧米諸国ではトイレットトレーニングの開始時期が軒並み遅くなっているそうだ1.それを危惧したスウェーデンの家庭医の医師を中心に調査され,生後1年以内のトイレットトレーニング開始が,胃腸や膀胱の機能に良い影響を与えることがわかった2.また,興味深いことに,ベトナムでは伝統的に乳児期からトイレットトレーニングを開始しており,9か月までにほとんどの児がトイレを使用し,2歳までにトイレットトレーニングを完了するそうだ3.東南アジアの子育てが世界をリードする,そんなことが分野によっては可能性がある. 

 

参考文献

1. Choby, B. A., George, S. & Jacinto, S. Toilet Training. Am Fam Physician 78, 1059–1064 (2008). 

2. Nilsson, T., Leijon, A., Sillén, U., Hellström, A. L. & Skogman, B. H. Bowel and bladder function in infant toilet training (BABITT) – protocol for a randomized, two-armed intervention study. BMC Pediatr 22, (2022). 

3. Duong, T. H., Jansson, U. B. & Hellström, A. L. Vietnamese mothers’ experiences with potty training procedure for children from birth to 2 years of age. J Pediatr Urol 9, 808–814 (2013). 

  

 

 

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初出掲載: 2020年 2月 15日