とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

イヤイヤ期にも思春期にも理由があるんじゃのう(脳)

ポイント

 

我が家のちびくんはイヤイヤ期

 4人のわが子を産んでくれた妻に感謝している。4人の子どもたちが日々成長していく姿は、どんなに難しい課題をやり遂げることよりもすさまじい喜びを私に与えてくれる。特に、唯一の男の子で2歳の第3子ちびくんの最近の動向に目が離せない。彼はいま口を開けば「いやだ!」と言う。いわゆるイヤイヤ期といわれる過程なのだろう。

ぱぱ「お風呂に入ろう!」

ちび「いやだ!」

ぱぱ「じゃあ、今日はお風呂に入らないでおこう!」

ちび「いやだ!」

ぱぱ「(お!?どっちも嫌だと!?ならばこの選択肢はどうだ!)お菓子食べる?」

ちび「いやだ!(しばらく考えて、、、)食べる!」

ぱぱ「(どうやら全く話を聞いてないわけでもねえな、こりゃあ)」

 という具合で、さっさとやれば済むイベントもひと悶着のせいで時間がかかる。それも、彼の脳でいま起こっていることを想像してあげると、より面白さが増す。つまり、いま彼の頭では、激しい変化が起きている最中なのだ。

 

どうやって動物は脳を高度に進化させたのか?

 動物は進化の過程で、脳を発達させてきた。正確には、発達した脳を持つ個体が淘汰を経て生き残ってきた。このように進化における脳の発達とは、つまりあらゆる可能性に備えて準備することができる能力を獲得する過程そのものである。あらゆる可能性に備えて準備するというのは、なるべく多くの不測の事態を想定した脳の神経回路を準備しておいて、のちに必要な神経回路を残していくという方法のことを言う。神経回路とは、情報の伝達を行う神経細胞の一つ一つが互いに連絡するために、細胞体から伸ばした突起を握手するようにしている構造のことを言い、それをシナプスと呼ぶ。

 

ヒトの脳は25歳くらいまでずっと変化している

 ヒトではだいたい4歳くらいまでに、そのシナプスの総数が人生でピークを迎える。それから25歳くらいまで、ずーっとそのシナプスの数が減り続ける1。減ることは悪いことではなくて、置かれた環境に適した、あるいはよく使うシナプスを残して、余計なものを減らすことでその作業効率をより洗練させていく。(作業机にある道具でも、めったに使わない道具よりも、よく使う道具をすぐ使えるように配置するのと同じだ。)そうしたシナプスの数を減らして最適化する過程のことを、シナプスの刈り込みという。シナプスの刈り込みは、脳の後ろのほうから起こり、最終的に前のほうで終わる2。その分かりやすい動画をアメリカの国立科学サイトが動画にしてくれている。赤いとシナプスの数が多く、青いと少ない。年齢を経るごとに全体が青くなる。

 これをみると、20歳で飲酒しても良いというのはいかがなものかと思うようになる。25歳くらいまでじわじわ発達が進んでいるのに、そこにアルコールをぶち込むことでどんな良いあるいは悪い影響があるのだろうか。と、もうすぐ35歳になるおじさんは、(自分は20歳からお酒を飲んでいるのに)若者に25歳まで禁酒を進めようと若年性老害と化してしまうのであった。ああ、無念。

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刈り込むのはタラちゃんの後ろ頭ではなくシナプス

 シナプスの刈り込みと、幼児のいやいや期や青年の反抗期は、密接に関係している。いやいや期では、シナプスの数がピークを迎えて制御が難しくなる。反抗期では、合理的な思考を司る脳の前のほう(前頭前野)でのシナプス刈り込みが急激に起こり、これまた制御が難しくなる。いずれの時期も共通しているのは、シナプスの総数が劇的に変化することだ。

 そうした、脳におけるものすごいイベントを目の当たりにできている。ときどきその現象が放つ強烈な魅力に頭がくらくらする。4人の子どもがそれぞれ反抗期を迎えるときには、もっとくらくらするだろう。そのときは、おろおろしながら、子どもの話をきいてやれていたい。また、妻と相談しながら、脳科学や心理学の教科書にも目を向けてみたい。

 

 そういえば、最近わたしのYouTubeのおすすめ動画に、”シナぷしゅ”(テレビ東京)が表示されるようになった。民法初の赤ちゃん向け番組だそうな。確かにこれ系の番組をNHK以外でみたことなかったなあ。正直あんまりおもしろくなかったので、一回みてやめた。が、おじさんの意見よりも、赤ちゃんのみなさんのご意見を伺いたいところである。

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 参考文献

1.Penzes P, Cahill ME, Jones KA, VanLeeuwen JE, Woolfrey KM. Dendritic spine pathology in neuropsychiatric disorders. Nat Neurosci. 2011 Mar;14(3):285-93. doi: 10.1038/nn.2741. PMID: 21346746; PMCID: PMC3530413.

2.Gogtay N, Giedd JN, Lusk L, Hayashi KM, Greenstein D, Vaituzis AC, Nugent TF 3rd, Herman DH, Clasen LS, Toga AW, Rapoport JL, Thompson PM. Dynamic mapping of human cortical development during childhood through early adulthood. Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 May 25;101(21):8174-9. doi: 10.1073/pnas.0402680101. Epub 2004 May 17. PMID: 15148381; PMCID: PMC419576.

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初出掲載: 2020年 2月 15日