とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

どうやったら正しく叱れるでしょうか? 

ポイント

・アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで提唱された心理教育法

・6秒ルールで、怒る必要のあるときだけ上手に怒り、そうでないときには怒らずに済む

・怒りの感情をコントロールして、NGワード使わず自分を主語にアイ・メッセージで子どもと上手く向き合うことができる

 

はじめに

👩「〇〇ちゃんはいつも▲して!前から何度もだめって言ってるでしょう!ちゃんとしなさい!どうしてそんなことするの!」

 

👧「びえーーーん!」

 

👩「泣いても仕方ないでしょう!」

 

👧「びえーーーん!」

以上、両者一歩も譲らず結局最後の方は互いになんで怒ったのか怒られたのか分からないまま、強制的に保育園へ行くなど一日の次のイベントへ。。。

 

上記のやりとりは、どこの家庭でも見られる一般的な光景かと思います。もうすぐ5歳になる長女、3歳になった次女には何度そんなやりとりをしたことか知れません。生まれたばかりの長男は、もしかしたらこれからそんなやりとりが彼女たち以上に待っているかと思うと、今から気が滅入ります。お子さんを持つ親御さんならば、怒りの感情と子どもの叱り方は、子育てする中で最も難しい課題の一つと感じる方も多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。

 

アンガーマネジメントとは?

子育てするときに限らず、怒りの感情は(残念ながら俗世を生きる我々にとって)日常的にありふれた感情の一つです。怒りは、仏教では人間の苦しみの根源である三毒(とん貪・しん瞋・ち痴)の中の一つとして捉えられています。貪;必要以上に求め貪ること、瞋:怒り、痴:無知、です。太古の昔から人間にとって毒であるとされてきたこと、それと戦って来た歴史があることがここからもお分かりかと思います。その怒りの感情を、科学的に分析して上手くお付き合いしましょう、というのがアンガーマネジメントです。アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで分野として確立され、さまざまな場面で活用されてきた方法です。実は医学の分野でもその怒りの感情との付き合い方は非常に大切です。リウマチなどの慢性疼痛を伴う病気の方は実に70%以上が常に怒りの感情を持っているとされる報告もあります1。小児科分野でも、都会の小学生が一番必要とする健康ニーズの一つにアンガーマネジメントが挙げられています2

 

つの丸

まずは怒りの感情が生じる仕組みについて知ることから始めましょう。人にはそれぞれ、こうあるべきだという理想があります。その理想に近いものは、自分と同じものとして容易に許容されます。下の図でいう中心の丸です。例えば、子どもが出かける前に自分から着替えを進んで済ませるときなどは、見ていて気持ちの良いものです。次に、その外の丸ですが、その理想から少し離れるけれど許容範囲内であることです。例えば、出かける前に子どもがご飯を少しゆっくりと食べているときなど、理想とは異なるけれど必要だから許せる場合などです。最後に一番外の丸、これは理想から大きく離れてしまった場合です。例えば、出かけるよと言っているのにおもちゃで遊び始めた場合などです。このように、あるべき姿から離れれば離れるほど我々の怒りの感情が湧き上がって来ます。

 

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日本アンガーマネジメント協会の改変図

 

6秒ルール

その怒りの感情は、湧き上がってから6秒間が一番強いとされます。我々がまずすべきであることは、この6秒間を怒りの感情に振り回されないことです。この6秒間で絶対にしてはいけないことは、反射的にNGワードを使うことです。NGワードとは、4つあります。

 

NGワード

  • 過去をさかのぼること(例えば「前から言ってるけど」、「何度も言うけど」、「これで何回目なの?」など。言われた方は納得しません。)
  • 責めること(例えば、「なんで」、「どうしてそうしないの」など。これで言われた相手は一気に殻に閉じこもります。そうなると相手の行動に変化は期待できません。)
  • 強い表現をつかうこと(例えば、「いつも」、「絶対に」、「毎回だよね」など。言われた相手はいつもじゃないのに、出来ているときもあるのに、と認めてもらえないことに意識が向いてしまいます。)
  • 程度の表現を使うこと(例えば、「しっかり」、「ちゃんと」、「普通はこうするでしょ」など。程度の表現は得てしてあいまいです。いつまでに、どれくらいなど、数値で伝えることが難しい場合もあるかと思いますが、できるだけ具体的にイラストなどで示してあげると良いでしょう)

 

アイ・メッセージ

「そんなこと気にしてなんかいられない!」

「忙しいのに、そんなの無理!」

 

その通りだと思います。私もNGワードを避けることは出来ないでしょう。子どもを相手にしたときに、あなた(You)を主語にして話すと、思わず上記のNGワードを連発してしまいそうです。そんなときは、わたし(I)を主語にして伝えてみるとどうでしょう。

「あなた(You)はどうして出かける前にちゃんと準備できないの!」

→「お母さん(I)はあなたが出かける準備ができないとお仕事に遅れてみんなに迷惑がかかってしまうの。時計の針がここになるまでに、着替えておいてね。」

相手が主語の場合と、自分が主語の場合とで、随分と印象が違ってくると思います。

 

さいごに

 今日から出来るアンガーマネジメント、その工夫をまとめました。まとめる過程でずいぶんと私も勉強になりました。一方でいきなり変われるか不安もあります。でも大丈夫。わたしたち親も、いきなり上手にはできません。子どもと一緒に成長すればよいのです。子どもが5歳なら、親としてもまだたかが5年です。一度は自分が子どもだったのだから、その時のことを思い出してどんな親が自分にとって良いか、想像しながら親も少しずつ成長すれば良いのです。いきなり上手にできる親はいません。

 ちなみに、子どもがやった行為に対して自分の怒りの感情が抑えきれない場合、まず子どもを抱きしめるようにしています。そして、しっかり眼をみつめて何がいけなかったのか、どうしてか、次からどうすれば良いかを順に二人で話します。子どもが怒られているという雰囲気だけを感じるのは、子どもにとっても親にとってもよくありません。次に同じ過ちを繰り返さないことが目的なのですから。

 

参考文献

  1. Okifuji A, Turk DC, Curran SL. Anger in chronic pain: Investigations of anger targets and intensity. J Psychosom Res. 1999;47(1):1-12. doi:10.1016/S0022-3999(99)00006-9
  2. Mansour ME, Kotagal UP, DeWitt TG, Rose B, Sherman SN. Urban elementary school personnel’s perceptions of student health and student health needs. Ambul Pediatr. 2002;2(2):127-131. doi:10.1367/1539-4409(2002)002<0127:uespsp>2.0.co;2

 

 

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初出掲載: 2020年 2月 15日