とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

大学で子どもの脳について研究している、小児科医です。2児の父でもあります。日々子どもから学んだこと、研究から学んだことを多くの方に知っていただき、より良い子育てにつながればこれ以上の幸せはありません。

首のすわりも早く、足もどんどん突っ張ります。立たせる練習をしてもよいでしょうか?

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ポイント

  1. 赤ちゃんの粗大運動の発達には順番があり、階段をひとつひとつ登るように、できるようになることが望ましい。
  2. したがって、首がすわったからといって、寝返りやハイハイを飛ばして、立つ練習をすることは禁止事項ではないが、順番どおりに進めるのがよい。

 

 末年始の当直、日直で非常にくたびれております。小児科医の田中一です。いつも乳児健診で多くの健康な赤ちゃんを外来で診させて頂いておりますが、この発達に関する質問は意外と多い。4ヶ月ごろに首がすわり、7ヶ月ごろに寝返りし始め、8から9ヶ月ごろに一人座り、それからハイハイ、1歳前後でつかまり立ちや早い子はもう歩いている場合もあります。さて、首がすわってだんだん体の自由が効くようになった赤ちゃん、立つ練習はしても良いでしょうか。

 

 えはNoかなあ、といつも答えています。理由は、首がすわってから立つまでの間に、必要な発達の段階があるから。ハイハイやつかまり立ちです。ただし、遊ぶ程度の立つ動作はOKでしょう。

 

 今の世の中はなんでも早いほうが、偉いような風潮です。最年少で〇〇の資格取得!最年少で米国有名大学卒業!流行りの教育やビジネス書籍でも、SPEEDの単語が飛び交っております。(仕事は早いほうが良いですから、僕は仕事が遅いので見習わないとですが)

 かし、子どもの発達においては、早ければ良いというものではなさそうです。生物としては確かにより早く立って歩けたほうが捕食されません。しかし、人間は、他の動物より未熟な段階で生まれ、その後大脳皮質を異常なほど発達させて他の動物にはない脳機能を獲得することを選択しました。ゆえに、他の動物が母親の胎内で済ませる発達を胎外で行う必要があります。生まれたばかりのキリンは生後1時間以内に一人で立ち上がりますが、人間はそうはいかないのです。特にハイハイは、体重を四肢で支えながら身体を移動させる負荷の大きい全身運動です。ハイハイによって体幹の筋力とバランスが養われ、それにより歩行が安定して行えるようになり転倒による危険を回避することへ繋がります。

 

 療の現場では発達の段階を知るための検査としてDenver発達検査があります1。この正常発達を示す表のように、階段状にできることがだんだんと増えていきます。早る気持ちが親心ですが、必要な時間をかけて発達の階段を楽しむことが大切でしょう。もちろん、発達が遅れている場合などは健診を機会にお近くの小児科医に相談してみてくださいね。

 

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  1. Frankenburg, W. K., Dodds, J., Archer, P., Shapiro, H. & Bresnick, B. The Denver II: a major revision and restandardization of the Denver Developmental Screening Test. Pediatrics 89, 91–7 (1992).

 

くすぐりの科学

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「🐭ちゅー、ちゅー!(くすぐったい、くすぐったい)」

「😏良いではないか、良いではないか」

 

には二人の娘がいる。リビングで私が疲れて寝ていることが良くあり、そういうときは「構ってよ!」と言わんばかりに、力強く体当たりを仕掛けてくる。2歳の娘はまだ小さいから思い切り踏んづけられても、そんなに痛くない。だけど、4歳の娘はまあまあ大きいので、それなりにダメージを食らう。「ううっ、」とひとしきり痛みを堪えてから、私は反撃に移る。

ョロチョロうごきまわる2人を捕まえて、絨毯の上に寝っ転がらせてやる。そして脇腹や首根っこのあたりを、コチョコチョー!としてやる。すると、2人は大きな笑い声をだして、くすぐる手を払いのけようとする。すかさず私は逃さまいと払いのけようとする手を避けて反対側の脇腹などをくすぐる。経験的に、あまりやり過ぎると泣いてしまうので、良いところでピタリと止めてやる。「お、くすぐり、終わったかな!?」という表情を見せて、まだ余裕そうならもう1クールくすぐりを加える。それで大体、彼女たちは満足して他の遊びに移るか、ママにお菓子や飲み物をおねだりしに行く。そうした一連を経て、私の平安なひとときが訪れる。

 

頃から、思っていたが、どうしてくすぐられることを、子どもは好むのだろうか。首には大きな血管が幾つもあるし、お腹には大切な臓器が一杯詰まっていて、その部分は本当なら守らなければならない場所なのに。触られるとくすぐったくて、楽しい気持ちになる。どうしてだろう。

 

2016年のサイエンスに掲載された論文によると、体幹の感覚を司る脳の大脳皮質深層に対する刺激による感覚入力が、脳でくすぐりとして認識されるそうだ1。つまり、くすぐられることで感覚入力が起こり、脳においてドパミン神経が活性化され報酬回路を回し、快感として認識されるということだ2。実験で使われたのはラット。不安な環境ではくすぐっても笑い声を発しないことが分かっているため、ラットの気分が落ち着いた環境で実験は行われた。ラットを仰向けにして手袋をつけた実験者がくすぐるのだ3体幹に対応する脳の体性感覚皮質での発火を調べると、浅い層をくすぐってもくすぐり効果はなく、深い層でのみくすぐりの効果が発揮された。また、くすぐり続けると、その神経発火の閾値は下がり、小さなくすぐりで笑うようになり、より多くの笑い声が確認された。

 

を含め、読者の方々もびっくりされたであろうことは、くすぐりの科学についての研究者がいること、その成果が世界的な一流雑誌に掲載される事実だろう。最近私はYou Tubeで漫才や落語を見ることが多い。意図せずよく見ているということは、笑うことで私の脳でも報酬回路が刺激されるのだろう。神経科学が貢献するのは病気だけではない。子育てにも、笑いにも活かせる。お笑い芸人さんが、こうした一流科学雑誌の共著者になる日が来るかもしれないと想像することは楽しい。

 

すぐられて笑うのは、ヒトだけではない。イヌ、ネコ、ブタ、イルカ、サメもくすぐり合って、笑うのだそうだ。生物の仕組みを利用したコニュニケーションの1つとして、ずっと昔からくすぐりは使われてきたのだろう。

 

れではみなさまも、こどもをくすぐるときには、こどもの大脳皮質第5a層での発火がバチバチとなりそれが報酬回路刺激となって笑う姿を、お楽しみください。やりすぎると泣いちゃうから、ほどほどに笑。

 

  1. Ishiyama, S. & Brecht, M. Neural correlates of ticklishness in the rat somatosensory cortex. Science 354, 757–760 (2016).
  2. Brudzynski, S. M. Communication of Adult Rats by Ultrasonic Vocalization: Biological, Sociobiological, and Neuroscience Approaches. ILAR J. 50, 43–50 (2009).
  3. Cloutier, S., LaFollette, M. R., Gaskill, B. N., Panksepp, J. & Newberry, R. C. Tickling, a Technique for Inducing Positive Affect When Handling Rats. J. Vis. Exp. (2018). doi:10.3791/57190

妊娠、授乳中のカフェインってどうなの?

 

はコーヒーより紅茶が好きです。リビングや仕事場に漂うあの香ばしいコーヒーの薫りはなにか気分を落ち着かせてくれます。しかし、コーヒーは32歳になった今でもあまり美味しいと感じたことはありません。20歳頃に、大人ぶって入った喫茶店(↓)で頂いたエスプレッソの強烈な苦味が、いまだに頭の奥の方で疼いているからかもしれません。よくこんな飲み物にお金払うな、大人は!と思いました。いまは飲めるようになりました、ちょっとだけ。

 

retty.me

 

ーヒー、紅茶、緑茶。どれも日常生活の飲み物ですが、どれもカフェインが入っています1。多くの本やネットでの情報では、妊婦、授乳中のカフェインはダメ!的な内容です。本当にそうなのでしょうか?

結論から述べると、一般的な摂取量では、妊娠初期の自然流産のリスクを高めます。しかし、明らかな影響はそれだけで、妊娠中の胎児発育には影響なく2、授乳中の乳児の睡眠障害も来さないとされています3。多量に飲むとそれらの影響もあるようです。具体的には1日コーヒー三杯以上。

 

フェインの一般的な摂取量とは、1日あたり200mgを指します。普段の飲み物コップ1杯(150ml程度)に含まれるカフェイン量を以下の表に示します。焙煎あるいはドリップしたコーヒーだと1杯あたり100mgくらいでしょうか。私も時々利用するセブン-イレブンコンビニコーヒーは小さいサイズで80mg、大きいサイズで150mgだそうです。 

 

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メリカ小児科学会では、カフェインを授乳中も摂取してもいいよとした上で、上限を200-300mgとしています。したがって、妊娠可能な女性は300mg以下のカフェイン摂取に留めることを推奨されています4。欧米人と比べて体の小さい日本人は200mgくらいではないでしょうか。つまり、コーヒーだと2杯。朝、それと昼か夜に1杯ずつ。

 

なみに、早産児では呼吸中枢が未熟であるために無呼吸が起こることがあり、その治療薬としてカフェインがよく使われます5。仕事を頑張る大人だけではなく、生まれたばかりの小さな赤ちゃんの呼吸をも支えるカフェイン。とりすぎにはご注意を。それにしても、玉露はカフェイン量多いなあ。おいしいけど。

 

  1. Nawrot, P. et al. Effects of caffeine on human health. Food Addit. Contam. 20, 1–30 (2003).
  2. Bech, B. H., Obel, C., Henriksen, T. B. & Olsen, J. Effect of reducing caffeine intake on birth weight and length of gestation: randomised controlled trial. BMJ 334, 409 (2007).
  3. Santos, S., Matijasevich, A. & Domingues, M. R. Maternal Caffeine Consumption and Infant Nighttime Waking: Prospective Cohort Study. Pediatrics 129, 860–868 (2012).
  4. Kuczkowski, K. M. Caffeine in pregnancy. Arch. Gynecol. Obstet. 280, 695–698 (2009).
  5. Abdel-Hady, H. Caffeine therapy in preterm infants. World J. Clin. Pediatr. 4, 81 (2015).

 

人種を超えた熱狂こそ平和

ライアン・ゴズリングはどの役をやっても格好良いと思う。それは彼自身のもつ人間的魅力が画面からにじみ出て私達に伝わるからかもしれない。ライアン・ゴズリング演じるニール・アームストロングの、月面に降り立つまでとそれからの人生を描いた映画、「First Man」。詳しくは観ていただければと思うが、強く感じたことは、「人種を超えた熱狂こそ平和」であった。

 

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First Man | Movie Page | DVD, Blu-ray, Digital, On Demand, Trailers, Downloads | Universal Pictures Home Entertainment Portal

 

夜空に浮かぶ月を見てきれいだなと思うことはあっても、行ってみようとはなかなか思わない。かぐや姫がでてくる『竹取物語』を書いた作者は未だに分かっていないが、人類は月にも行けるとは、作者も思いも寄らなかったはずだ。

 

その月に降り立つ瞬間は全世界で中継され、世界人口が35億人前後だった当時で6億人を超える人々がその瞬間を見守ったそうだ。これこそが人種を超えた熱狂が生み出した平和な状態だったのではないか。

 

宇宙開発に力を注ぐジョン・F・ケネディは、貧困にあえぐ層からの強い反発を受けながらも、あるいは優秀な宇宙飛行士たちの殉死が多くありながらも、計画を進めた。泥と血にまみれながらも彼が押し進めたプロジェクトは、脈々と意志ある者たちに引き継がれている。彼が思い描いた将来像は、月面に降り立つことではなく、人類が宇宙で暮らすことでもなく、国境を超えて睨み合い武器を取る手を休めさせて、誰が見てもわかる人類の偉大な一歩の瞬間を共有すること自体にあったのではないかと、僕は思う。

 

科学でも、文学でも、音楽でも良い。そんな人種を超えた熱狂を作り出すことで、2次的に得られる平和が、実は神の前で祈ることよりも効果があると、科学者である私は思いたい。そしてそこに貢献することこそ、科学者の本懐でありたい。ダイナマイトや原子爆弾をつくることに利用されてしまった不幸な天才科学者たちを含めた偉大な科学者たちの肩にのって、科学と平和について、心からそう感じた。

 

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in English below

 

Peace in enthusiasm beyond human race

 

I think Ryan Gosling is cool in any role. It may be because his own human charm can attract us out of the screen. “First Man” is a film about Neil Armstrong, who plays Ryan Gosling, depicting life before and after the moon landing. I would like you to watch it in detail. What I felt strongly was that " Peace in enthusiasm beyond human race."

 

You may think it's beautiful looking at the moon in the night deep blue sky, but you don't think it's easy to go. The author who wrote the “Taketori Monogatari”(Japanese traditional old story about princes from the moon) is still unknown, but the author should have never thought that man could go to the moon.

 

The moment of getting off the moon was broadcast all over the world, and over 600 million people watched the moment when the world population was around 3.5 billion. This may have been a peaceful state created by an enthusiasm beyond race.

 

 

John F. Kennedy, who focuses on space development, has proceeded with the plan, despite the strong backlash from the poverty-stricken class and the dying of excellent astronauts. The project he pushed forward while covered in mud and blood has been handed down to those who are willing. The future image he envisioned was not only to land on the moon, or to live in space, but to share the moment of a great step for humanity resting hands in which weapons are.

 

It can be science, literature or music. As a scientist, I want to think that by creating such an enthusiasm that transcends race, the peace that can be obtained secondarily. It might be more effective than praying before God. And contributing to that is my scientists' desire. Now we should look the vista on the shoulders of the giants including unhappy genius scientists who have been used to create dynamite and atomic bombs.

 

 

脳の仕組みに逆らわない学習法 〜日常にきっかけを求める〜

 

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スラムダンク第24巻 

 

「体が覚えてらっ」

 

高校バスケ漫画のスラムダンクで、片眼を負傷したエース流川が両眼を閉じてシュート放つシーンの台詞です。何百万本とうってきたシュート、視覚に頼らずとも全身の感覚だけでシュートを放とうとも成功する。心揺さぶられるシーンの一つです。

 

「こんな公式、これからの人生で使うわけねえ」

「過去の歴史なんて、勉強してなんになる」

 

方で、学校教育の中で(多くの、あるいは全ての)子どもたちが抱く疑問です。実は僕も、社会の授業がとても嫌いでした。1919年にベルサイユ条約が結ばれたと、だから何なんだと!笑 

今の自分の生活に、この知識がどう活きるのか、それが不明確な勉強は本当に嫌いでした。だけど、当時は学校の先生になりたいと思っていたので、仕方なしに授業は聞くしノートは取るけど、苦痛で仕方なかったのです。一方で、数学や理科はとても好きでした。僕の祖父は第2次世界大戦時に満州でいわゆる満州鉄道で働く鉄道マンでした。彼は数学がどのように鉄道業務に活きるのかを実体験を持って教えてくれていました。三角関数は、中学校の時に祖父から教わっていたくらいです。また、理科の実験や植物の観察も、目の前で起こる現象を理解するためのツールとしての知識であったために、実験や観察を経て教科書を紐解くことは楽しみでした。

 

このように、実際に日常で経験する出来事や、目の前で起こる現象を学ぶことのほうが、黒板の前に座って教科書を読むことよりも効果的であることは多くの方が経験するのではないでしょうか。子どもでも大人でも、それは変わらないと思います。

 

ナダはかつて、フランスの植民でした。その影響もあって今でのカナダでの第2外国語はフランス語がメインです。私達日本人が、外国語を身につけるのがしばしば困難であるように、カナダの子どもたちもフランス語を習得するのは簡単ではなかったようです。しかし、Germain博士とNetten博士(おじさんと、おばさん)が神経科学を利用したフランス語学習法、神経言語的アプローチ(neurolinguistic approach, NAL)を編み出しました1。このアプローチが学習法として優れているのは、まず会話から始めることです。たどたどしくも始めた会話の中で、いくつも問題点が出てきます。単語、文法、話題など、話したいけどうまく話せない原因を自分で見つける。それから、それを解決するための方法として知識を学ぶという方法です。

 

の方法は、言語学習に限らない点においても優れていると考えます。僕は、昔から座って勉強すること自体はあまり好きではなかったので、実習や実験が好きでした。大学生のときには定期的に小学校へ出向いて、理科の授業を2コマほどもらって授業することもありました。その時は、まず魚釣りを小学校5年生の生徒と一緒にして、魚をゲットする。それから、その魚を解剖しその構造と機能を知る。ついでにそれを調理して食べるという授業をしました。拍動する魚の心臓をみんなで観察しながら、脈打つ自分の心臓について思いを馳せるという貴重な時間でした。

 

において記憶の分類法は2つあります。1つは時間軸によって、短期記憶と長期記憶に分けられます。もう1つは意識して思い出す必要があるかどうか、陳述記憶と手続き記憶に分けられます。たとえば、陳述記憶はいわゆる教科書の内容を覚えるとき、手続き記憶は自転車の乗り方を覚えるときに使用します。冒頭の流川がシュートをうつ動作は、まさしく体に染み付いた手続き記憶の典型例です。学校の勉強や、資格の勉強をする際に、多くの場合において陳述記憶に留まってしまっていることが多いです。つまり、言語化して説明はできるように記憶はするけれども、体に染み付いた手続き記憶はできていない状態です。流川が眼を閉じてシュートできるようになるまでには何百万本と繰り返しが必要であったように、手続き記憶が完成するには単純な繰り返しを体に脳に染み込ませる必要があります。

 

なる知識と、知恵の違いは、実生活に役立たない陳述記憶なのか、役に立つ手続き記憶なのかの違いです。下の図は、MacLeodさんが着想した、知識 knowledgeと経験 experienceと創造 creativityの関係性を表す図です。知識が経験によって繋がり、そのつながりを組み替えたり新しく生み出すことが創造性という解釈です。実に的を得ているかと思います。机に向かってひたすら知識(点、dots)を増やす時期や時間も大切ですが、それを繋ぐ経験(線、connecting dots)もとても大切です。さきほどの神経言語的アプローチに話を戻すと、まず会話から初めて、点も線も足りないことを痛感した後にそれらを身につけると。そのステップを踏まないで、「教科書の15ページから始めましょう。ここにはCan I use this?と書かれていて、Canは助動詞で。。。」では面白くないのです。要は脳の仕組みに合わないのです。

 

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http://www.steve-wheeler.co.uk/2015/01/joining-dots.html

 

〜3歳のころはいろいろな対象に興味がでてくる時期です。また、3歳から6歳はさまざまな対象に理解がすすみます。そういった時期に、ふとした日常のきっかけを大切にしてそれを深める時間はとても貴重です。下記は最近、3歳の娘と図書館の前でした会話です。

 

子「あ、アリさん!」

父「アリさんだねえ。よく見たら物を運んでるね。どこに運ぶのかな?」

子「おうち?」

父「そうおうちだね。誰にあげるのかな?」

子「あかちゃん?」

父「そうかもね。パパもよく知らないから、かえって図鑑みてみようか」

 

  1. Germain, C. Grammaire de l’oral et grammaire de l’écrit dans l’approche neurolinguistique (ANL). Synerg. Mexique, no 3, 15-29

予防接種

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日、予防接種を全くしていない2歳近くの女の子が、母に連れられて夜間の救急外来に来られました。秋から冬にかけて流行する、とはいえ今では年中見られるRSウイルス感染症でしたが、発熱しておりややぐったりしている印象でした。結局、他の感染症はなくRSウイルス感染単独だったので、胸をなでおろしました。念の為、母子手帳を見せていただくと、健診の度に予防接種を打つよう指導されていたようです。母に、後日来られた父にその理由を聞くと、副反応が心配だからとのことでした。

 

反応が起こる確率はとても低く、もし起こったとしても救済制度が整備されています。定期接種は厚労省、任意接種は医薬品医療機器総合機構が責任部署です。

 

防接種が法的に制定されたのは1948年。天然痘や百日咳、腸チフスなどの12疾患の予防接種が義務化されました。成果が出始めたのは60年代、感染症罹患者や死亡者は大きく減少しました。一方で種痘後の脳症などの予防接種による副反応や健康被害が社会問題化していきました。被害者家族や世論に押される形で、定期接種の義務接種が努力義務へ変更されたのは、1994年の改正予防接種法によるものです。結構最近の話です。義務化された上で集団接種していた時代から、個別接種へと大きな変遷を経ました。

 

んな歴史上の変化も功罪を伴います。個人の意思決定権が尊重されたという見方もできますが、適正な情報の欠如による接種率の低下を招きました。米国では「日本人を見たら麻疹と思え」という日本にとっては不名誉な格言は、誠に残念ながら現在も真実です。2015年にWHOから麻疹排除国として認定を受けましたがその後も麻疹流行が頻発しています。これは麻疹ワクチンの接種拒否者によって、集団免疫が機能していないことに大きく関連します。集団免疫とは、みんなで予防したら病気がうつる機会が減って全体として罹患者が減るという考え方です。つまり、個人の意思決定が尊重された結果、麻疹ワクチンの接種率は下がり、未接種者が罹患するとその周りで流行が起こるということです。2016年の研究では、ワクチン接種率が低いとそのコミュニティーで流行が見られる傾向にあると結論付けられました1。予防接種は個人の病を未然に防ぐことにも、まわりにうつさないためにも有効な手段なのです。

 

マホでググれば、Twitterで探せば、とりあえず情報はありますが、正しいかどうかは吟味が必要です。どう行動すべきか、命に関わる判断は、正しい情報に基づいて行われる必要があります。ワクチンに限らず子どものことで迷った場合は、信頼できるお近くの小児科医に、ぜひご相談ください。

 

  1. Phadke, V. K., Bednarczyk, R. A., Salmon, D. A. & Omer, S. B. Association Between Vaccine Refusal and Vaccine-Preventable Diseases in the United States. JAMA 315, 1149 (2016).

生まれたばかりの赤ちゃんは夢を見ますか?

生まれたばかりの赤ちゃんは夢を見ますか?

 

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世の中は秋の連休、私はど真ん中に当直がありました。どんな職場でも若手、下っ端は辛い笑。

その当直中に、「赤ちゃんが生まれたので産科の先生から連絡があると思います。」と新生児室の看護師さんから連絡がありました。前期破水から時間経過が少し長く経過していたためですが、幸い感染なく今も過ごされておりほっと胸をなでおろしているところです。

そのご両親にお祝いの言葉をお伝えした後に、現在の状態について検査結果を合わせてお話をします。お母さんは初産婦さんで分娩に時間がかかって大変だったにもかかわらず、元気な笑顔です。お父さんは時折やや不安そうな表情を見せるものの、お母さんの元気さに勇気づけられているような印象でした。お話が終わって、新生児室ですやすや寝ている赤ちゃんをご両親と一緒に見に行きました。肌の色は白くてきめ細やかでふわふわと綿のようです。ふとお母さんが、「赤ちゃんも、夢をみるのですかね?先生」と言いました。「赤ちゃんの睡眠はREM睡眠といって比較的浅い睡眠が多いです。REM睡眠のときに夢を見やすいとされているので、赤ちゃんは夢を見ているのかもしれないですね」と、私はその時答えました。

その後、その答えが気になって調べてみたのでここに記します。

 

Do Babies Dream?

アメリカ、Forbesに読者から同じような質問がありオランダの発達神経学者 Fabian が答えています。彼の答えは、おそらくノー。夢を見るだけの経験の蓄積、およびその記憶の能力が大人のそれらより少ないからだろうという結論でした。ただし、赤ちゃんの脳内イメージが可視化されるようになるまでははっきりした答えは分からないだろうとも述べています。

https://www.forbes.com/sites/quora/2018/12/28/do-babies-dream/#89f5a0d1c9ba

 

確かに、そのとおりだと思います。赤ちゃんは胎内ではほとんど眼を開けず視覚情報はあまり多くありませんが、一方、胎内で音を聞くことはできます。過去引用回数が400回を超えるHepper先生の論文によると、妊娠19週の胎児にはすでに500Hzの音への反応が見られたようです1。また、胎児でも海馬や大脳皮質が機能し始めるずっと前から、経験したことを情報として記憶することができます。最も原始的な学習である感覚運動学習は、妊娠中期から後期にかけて現れます。胎内で手を動かしたり、ママのお腹を蹴ったりといった運動パターンが赤ちゃんの脊髄や脳幹といった、より単純で原始的な神経伝導路に保存されていると考えられます。

したがって、赤ちゃんは生まれる前から音を聞くことができ、原始的な運動パターンに関しては記憶されています。もしかしたら、赤ちゃんが寝ているときにはこうした数少なくはありますが赤ちゃんがこれまでしてきた経験を夢見ているのかもしれません。いつの日か赤ちゃんの脳内イメージが再現されて明らかになる日が来るのが楽しみです。REM睡眠、non-REM睡眠などの睡眠に関わる詳細は回を改めてまとめたいと思います。

 

  1. Hepper, P. G. & Shahidullah, B. S. Development of fetal hearing. Arch. Dis. Child. Fetal Neonatal Ed. 71, F81-7 (1994).