とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

大学で子どもの脳について研究している、小児科医です。2児の父でもあります。日々子どもから学んだこと、研究から学んだことを多くの方に知っていただき、より良い子育てにつながればこれ以上の幸せはありません。

赤ちゃんを迎える前に知っておきたい、葉酸のこと

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イント

  1. 受胎する頃と妊娠初期は葉酸を積極的に摂取することが大切
  2. 葉酸はビタミンB群の仲間であり胎児の脊椎部分の発生に必須
  3. 妊娠初期に葉酸が不足すると二分脊椎症などの神経管閉鎖障害が起こるが、先天性異常症のなかでは唯一予防可能な疾患

 

「おしっこは出来るだけ学校では行かないようにしています。いじめられるから。」

まだニキビの目立つ頬、整髪料で少し逆立った髪の毛。普通の14歳の男の子です。彼は、さまざまな発達障害のあるお子さんが通う、養育学校に通う中学2年生。学校健診で、彼はこう言っていました。彼のお尻には、しっぽの部分に今はあまり目立たない手術痕があります。

 

療従事者、特に子どもに関わる方であればここまでの説明と題名で、ある疾患が思い浮かびます。そう、二分脊椎症です。この男の子は生まれながら二分脊椎症であり、生後まもなく手術を受けました。その後も、二分脊椎症の症状の一つである神経因性膀胱・遺尿(自分でおしっこできない)があるため自分で導尿(定期的に尿道に管を入れておしっこをだして膀胱を空にする)しなければなりません。男の子が学校のトイレでおしっこするときは、たいてい小便器でするものですが、この男の子はわざわざ保健室に行かなければなりません。それで友達にいじめられるものですから、学校に来ている数時間はずっとおしっこしないのです。

 

酸はビタミンB9であり、細胞分裂やタンパク質合成に深く関与しています。ビタミンという言葉は今やコンビニやドラッグストアでよく見かける名詞ですが、その定義を言葉でしっかり説明しなさいと言われたら、ちょっとむずかしいですよね。サクッと説明すると、ビタミンとは、生きていく上で必須であり、体内で十分な量を合成できないため体外から摂取しなければならないもののこと、です。

 

枢神経系、つまり脳とか脊髄とかが発生するのは妊娠7週ころまでです。妊娠が分かってから葉酸摂取を開始するのではなく、妊娠の少なくとも1ヶ月以上前から葉酸摂取を開始して、妊娠12週ごろまで続けることが厚生労働省からも推奨されています1。目安は1日に400μgです。その他の多くのビタミンでも同じですが、欠乏症も過剰症もいけません。適量が良く、1mg/日を越えないことが重要です。普段の食生活でも葉酸は摂取できますが、200μg/日前後であることが多いようです。18歳以上の男女では240μg/日が推奨摂取量とされています。葉酸は熱に弱く、水に溶けてしまう性質があるため、摂取の方法は気をつけなければなりません。野菜に換算すると350g/日だそうですが、毎日毎日サラダを大量に食べるのも億劫でしょう。したがって、妊娠を考えている女性や妊娠初期の方は、サプリメントを上手に使うと良いです。

日本の外に目を向けると、世界81カ国で穀類への葉酸添加政策が行われ、二分脊椎症などの神経管閉鎖障害の発生率が多いところで半分も減りました2

 

ちゃんを迎える前にできる最初のご両親の仕事、それは葉酸の摂取です。二分脊椎症は防げます。冒頭の男の子の二分脊椎症を、僕は治すことが出来ません。おしっこを管を使わずに出せるようにしてあげることも出来ません。自分の無力さをいまも痛感するから、なんとかこの思いを昇華させるために、せめてこのブログを読んでくださった方々の身の回りで正しい知恵が広まって、健康な命を大切に楽しめる子どもを増やせたら、これ以上の幸せはありません。ああ、なんとも悲しくてむなしく、でも希望に満ちた気持ちだろう。

 

なみに、葉酸は1940年代にほうれん草から分離抽出された水溶性ビタミンです3。論文を読むと、4トンのほうれん草から抽出したそうです。そう、見間違いではありません、4トンです。研究者が4トンのほうれん草を前に、どのような気持ちだったか。想像するだけで面白い、これだから過去の論文をほじくり返すのは面白い。ポパイの作者はこれを知っているだろうか気になる。

 

  1. Hall, J. & Solehdin, F. Folic acid for the prevention of congenital anomalies. European Journal of Pediatrics 157, 445–450 (1998).
  2. Food Fortification Initiative (FFI). Fortifying Flour with Folic Acid to Prevent Neural Tube Defects. 23–26 (2018). Available at: www.cdc.gov/ncbddd/folicacid.
  3. Mitchell, H. K., Snell, E. E. & Williams, R. J. The concentration of “folic acid”. J. Am. Chem. Soc. 63, 2284 (1941).

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初出掲載: 2020年 2月 15日