ポイント
- 血液型が定まるのは少なくとも1歳以降、個人差もあるが5〜10歳で定まる子もいる
- 緊急の場合でも、本人や家族の申告を元に輸血することはない
保育園や幼稚園で、入園する際に血液型を書く欄がある場合が多いようです。そうしたときに、まだお子さんの血液型が分かっていないことがよくあります。病院を受診し、採血が必要な際に、お母さんからよく血液型についての質問があります。日本では昭和50年代くらいから先天性代謝異常症の検査のついでに血液型の検査を行っていた時期もあるようですが、現在では行われていません。それは、意味がないからです。なぜ意味がないかというと、子どものときの血液型と、成人になったときの血液型が違うことがあるからです。要は、子どものときの血液型は定まっていないということ。
赤血球表面の抗体の種類を元にABO血液型を分類します。新生児期には母親由来の抗体が影響する場合もあり1、また、自分で抗体を作り始めるのは一般的に生後3,4ヶ月以降であり、成人レベルに達するのは1年以上かかります。個人差もありますが3〜10年かかる場合もあります2。したがって、乳幼児期に血液型が分かったところで、それは変わりうるということです。また、子どもの赤血球表面の抗体は成人のそれと比べて反応性が弱く、検査で誤った血液型に判定される可能性もあります3。
それでは事故にあって輸血が必要なときに、家族が血液型を知らないと輸血できないではないか!と思われる方もおられるかと思いますが、ご安心を。輸血により影響が出ないABO型はすでに分かっており、どんな血液型でも対応できるようにまずは輸血を開始します。また、どんなに急いでいたとしても家族や本人の申告で輸血する血液型を決めたりはしません。なぜなら間違っていた場合に、溶血、つまり赤血球が壊れてしまい命にかかわるためです。
ちなみに、血が赤いのはこの赤血球があるから。逆に貧血のときには顔色が悪いのはこの赤血球が足りないから。赤血球にはヘモグロビンという鉄を含むタンパク質があり、体の隅々まで血管という道路を通って酸素を細胞まで届けます。風呂場で鼻血がでたり、怪我したときに、水が真っ赤に染まる経験がおありでしょうか。塩水よりも真水のほうが浸透圧が低いため赤血球が壊れやすく、海で怪我したときより、風呂で怪我したときのほうが血が赤く見えるのはより多くの赤血球が壊れているから。小さい頃は海のテトラポッドについた牡蠣の殻で、よく足の裏を切っては痛い思いをしてきました。最近は、泳ぐときも履いていれるマリンシューズがあって便利ですね。
- Shaikh, S. & Sloan, S. R. Clearance of maternal isohemagglutinins from infant circulation (CME). Transfusion 51, 938–942 (2011).
- Liu, Y. J., Chen, W., Wu, K. W., Broadberry, R. E. & Lin, M. The development of abo isohemagglutinins in taiwanese. Hum. Hered. 46, 181–184 (1996).
- Yoshida, A. Genetic mechanism of blood group (ABO)-expression. Acta Biol. Med. Ger. 40, 927–41 (1981).
さいごに
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