とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

気になる発達障害、いつ受診すべきか?

 

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アメリカでは4〜17歳の子どもの11%がADHDと診断され、6%が薬で治療、その数は増え続けていると報告されている。


ポイント

発達障害は3つの疾患あるいはその組み合わせからなる

・3つとは、自閉症スペクトラム、注意欠陥多動障害、学習障害

・疑うタイミングの目安はそれぞれ、自閉症スペクトラムは1歳半検診、注意欠陥多動障害と学習障害は就学後

 

我が家の長女は4歳。習い事はバレエとピアノ、ときどきパパとプールにいって泳ぎ方を練習、とても活動的です。一緒に買物に行くと、2歳の妹はまだ小さいから、粒の大きいマスカットは食べにくいだろうと、粒の小さなデラウェアを選ぶ妹思いな面もあります。ところが、気になる点もいくつかあります。彼女はいろいろなことに興味があるからか、おもちゃが出しっぱなしのこともしばしば。なにかに集中すると、周りの問いかけにも反応しなくなります。立っていても座っていても、常に体のどこかを動かしてじっとしていません。心配した妻がネットで検索して、発達障害の症状がいっぱい当てはまったので、「受診したほうが良い?」と私に質問されました。世のお母様方も、同じように愛する我が子の発達について気にることもあるのではないでしょうか。いつ受診したら良いのか、その目安はあまり知られてません。まずは、発達障害とはなにか知ることが大切です。その上で、受診する適切なタイミングについて記したいと思います。

 

 まず、発達障害とは、3つの疾患あるいはその組み合わせからなります。

3つのうち、1つだけのお子さんもおられるし、2つあるいは3つとも合併することもあります。子どもの専門家である小児科医でも、学校の先生でも、発達障害がこの3つから構成されることを知らない方も多いです。それくらい、発達障害という言葉が先行してしまい、その実態については知られていないことが多い分野であると言いかえることができます。3つの疾患それぞれについて、症状と疑うタイミングについて各論します。

 

多くは1歳半健診で言語発達が遅れていることで指摘されます。首の座りや寝返り、独り歩きなどの運動発達の遅れがないのに、発語がないときはASDやLDが疑われます。1歳半健診でASDを疑う場合、CHATというチェックリストを用いて大まかな目安とします1。Check-list for Autism in Toddlersの略です。Toddlersとは、よちよち歩き始めた幼児のことを指します。CHATは、3つの行為ができるかどうかで判定します。①指差し、②同じ目線、③ごっこ遊びです。①の指差しは、例えば子どもが絵本の絵を指差すことです。ASDの場合はできません。②同じ目線とは、例えばお母さんが何かを見たときにそれに視線を向けることができるかどうかでうす。ASDの場合できません。③ごっこ遊びは、物を代用したりあたかも存在するかのように振る舞う遊びであり、ASDではできません。3つとも出来ない場合はASDが疑われるため2次健診に繋げる必要があります。ただ、CHATでASDを疑れたからといって必ずASDであるとは限りません。

  • 注意欠陥多動障害 attention deficit hyperactivity disorder, ADHD

一般的に2,3歳ごろからの落ち着きのなさやカンシャクで気づかれることが多いです。とにかくじっとできない、注意が散漫、話しかけても聞いてないなど。突発的な行動、怒りを顕にすることもしばしば。このような症状が見られた場合はADHDの可能性もありますが、基本的にADHDの診断は就学以降です。それまでは年齢相当の多動であることも多いので、十分な経過観察が良いでしょう。保育園や幼稚園で、お友達を傷つけてしまうなどの過剰な行動が目立つ場合には就学を待たず専門医による2次健診を受ける必要があるでしょう。

  • 学習障害 learning disorder or leaning disability, 以下LD

LDは一般的に、就学してから気づかれることが多いです。字が読めない、書けないといった場合には、1歳半検診や3歳児健診で既に言語発達が遅れている場合が多いため、知的障害ではないかどうか、発達検査をする必要があります。LDは診断が遅れるとその後の子どもの人生に大きな影響を及ぼします。字が読めない・書けない、勉強ができない、いじめられる、学校が嫌になる、不登校になる、生活習慣病のリスクが増える、就労が困難になるといった望ましくないルートをたどることも少なくありません。幼児のときに言い間違いや、しりとり遊びがなかなかできないなどの言語発達に遅れがある場合もありますが、実際には就学してから症状が明らかになるケースが多いです。

 

これまで、発達障害の3つの疾患について症状と疑うタイミングについて述べました。診断と治療については割愛しましたが、それらについても改めて詳細したいと思います。

 

私の尊敬する小児科医、お茶の水女子大教授の榊原洋一先生が、発達障害の現状について、ブログでこう述べておられます。

「判断が早すぎることは良くないこともある。」

https://www.blog.crn.or.jp/chief2/01/71.html

 

発達障害の検査、診断、治療が目の前のお子さんにとって本当に必要なことなのか、過剰ではないのかを考える必要性を説いておられます。小児科医の仕事は、子どもに必要のない検査や治療、親の心配と苦労をいたずらに増やすことでない。その子に本当に必要なことはなんなのか、時期を逃さず早まらず、適切な発達を促すために必要なことをするのが、小児科医の仕事。そう戒めを受けた気持ちです。

 

ところで4歳の我が長女について。彼女はいまADHDを疑うチェックリストはある程度満たしてしまいますが、年齢相当の多動であると現時点では結論づけて経過観察を行うこととしました。よほどの悪化がなければ、受診はしないつもりです。妻が私に内緒で受診してしまえば話は別ですが笑。また、就学後の様子をみて方針を再度検討しようと思います。

 

  1. Baron-Cohen S, Cox A, Baird G, et al. Psychological markers in the detection of autism in infancy in a large population. Br J Psychiatry. 1996;168(2):158-163. doi:10.1192/bjp.168.2.158

さいごに

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初出掲載: 2020年 2月 15日