とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

クレーマーにブチ切れせずに、よりよい解決法を導くには? 

ポイント 

  • 心理学用語でラポール(rapport)とは意思の疎通性を指す。 
  • 小児科では、真のクライアントである子どものほかに、親御さんとのラポール形成が重要である。 
  • 新型コロナウイルス対策のため電話診療が増えているが、電話診療でのラポール形成は注意を必要とする。 

 

電話口からの激しい口調にたじろぐ 

2022年の夏は、日本にとっては新型コロナウイルスの流行との戦いでした。その中で、電話でのやりとりを余儀なくされるケースも多くありました。インターネットやSNSのような匿名性はないものの、相手の見えない電話でのやりとりでは、これまでに経験したことのない出来事が多くありました。 

「どうしてもっと検査をしてくれないのか!」 

「熱が40度を超えているのに入院をしなくて大丈夫か!」 

「帰宅して何かあったら責任をどうとるのか!」 

このような電話口からの激しい口調からは、親御さんの不安が強く感じ取れます。度を越えた激しい場合もあります。なるべく冷静にと心がけておりますが、たじろぐことも、そこまで言わなくても良いんじゃねえかと怒りを覚えることもあります。しかし、そこはプロフェッショナルとして冷静になり、わが子を思う親御さんの気持ちに沿いながら、医学的によりよい方向へと導けるよう努力するのが我々の務めです。 

 

電話診療の難しさ 

小児科で難しい問題の一つに、親御さんとの関係性の構築があります。フランス語のラポール(rapport)は心理学用語であり、意思の疎通性を意味します。これまでに私自身は、患者さんや親御さんとのラポール形成で困ったことはありませんでした。過去に医療側とトラブルが多く問題であった患者さんや親御さんとも、腹を割って話し、ニーズに対応しつつ必要な医療を提供することで、良いラポールを築いてきました。ところが、ここにきて電話診療の難しさを感じています。電話では意思の疎通がより注意深く行われる必要があることが分かってきました。むしろ、これまで言語以外の表情やしぐさなどの情報にどれだけ頼ってきたのかを思い知らされました。医療者側がどれだけ患者さんのことを思っていても、電話では音声情報しかないため、言語化された情報の中からしか判断材料とならないのです。 

 

クレーマー、モンスターペアレントを作らないために 

経験が増えると、クレーム対応やむなしの場面に直面します。その時に大切なことは、クレーム対応の原則を守ることです。クレーム対応は、表のような流れで進めることが推奨されます1。私として新たな気づきであった点としては、クレーム対応へ備える②の段階で、「相手を罰してやろうと思っていないか?」という自問自答の項目です。つまり、そう思っている時点でクレーム対応への準備ができていないのです。その状態でそこから先に進んだとしても、対立しか残らないことは明らかです。「どうして私が一生懸命に子どもをよりよくなるように進めていこうとするのに、この親御さんは邪魔をするのだろうか。自分がやっていることがいかに邪魔をしているか、分からせてやりたい!」という考えが思考を広く支配してしまっていました。いま思えば、クレーム対応をしているつもりでも、火に油を注いでいました。 

子どもさんが、よりよい医療を受けられるために、心配のあまり口調が激しくなってしまった親御さんでも、クレーマーやモンスターペアレントにしてしまわないために、自分ができることをしていこうと思います。対応に困ったことをこの道30年の小児科部長さんに相談すると、はっはっはと笑われて器のでっかい話をされました。自分の伸びしろに気づかされます。 

 

対立の解決手順 

自問自答 

家族への声掛け 

1.対立に気づく 

自分は怒っているか? 

普段通りに対応できているか? 

 

2.対立の解決へ備える 

怒りで傾聴できなくなってはいないか? 

自分が正しいと独りよがりになってはいないか? 

相手を罰してやろうと思っていないか? 

 

  3つの側面を確認 

何があったのか? 

自分はどう感じているか? 

自らのアイデンティティを脅かしているか? 

 

  対立に向き合う 
 目的を明らかにする 

この対立を放置したらどうなるか? 

問題解決のこちらの目的は? 

 

3.相手への決めつけを避けて会話の糸口をつかむ 

第3者から見たらどう思うだろうか? 

今後どうなってほしいか、ゴールなどの全体像について話し合いませんか? 

4.感情ももつれを解きほぐす 

どうしたら協力が必要だと認め合えるか? 

自分vs相手の思考に陥っていないだろうか? 

相手の要望について、オウム返しをして確認する。 

5.共感する 

相手への気持ちへの理解を分かりやすく示しているだろうか? 

相手の感情に対する理解を言葉にして示す。 

6.双方のニーズを満たす選択肢を一緒に探す 

この選択肢は相手やこちらに良いだろうか? 

相手の要望を踏まえ選択肢を提示し、その良い点と悪い点について議論する。 

7.それでも解決しない場合は支援を求める 

交渉に役立つ助けはないか? 

中立的な第3者の介入を提案する。 

 

参考文献 

1.  Back AL, Arnold RM. Dealing with conflict in caring for the seriously ill: "it was just out of the question". JAMA. 2005 Mar 16;293(11):1374-81. doi: 10.1001/jama.293.11.1374. PMID: 15769971. 

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初出掲載: 2020年 2月 15日