ポイント
・低・中所得国の小児での抗生物質が投与される病気の発症が毎年2200万例程度防がれている
・その結果から推定すると、世界では肺炎球菌結合型ワクチンと弱毒生ロタウイルスワクチンのたった2つのワクチンにより、1億例の抗生剤の投与が防がれている試算となる
ワクチン接種の重要性とその副反応について、そして抗生剤の投与による副作用をこれまでみてきました。ワクチンの発見によりこれまでどれほどの子どもが救われてきたか、そして抗生剤の投与を減らしてきたか。火を見るより明らかです。COVID-19を世界的に奇跡と言える成績で抑え込むことのできた我々日本人は、それを誇るべきですし、それを次の世代に引き継いで行かなければなりません。その感染症に対する対策の一環として、ワクチンは再度脚光を浴びることでしょう。
2020年5月にNatureで発表された報告によると、中東・アフリカ・アジアなど低〜中所得国の65,815人の子どもについて、肺炎球菌結合型ワクチンと弱毒生ロタウイルスワクチンの2つのワクチン接種により、呼吸器感染症で19.7%、急性胃腸炎で11.4%の症例において抗生剤が不要でした。その結果から、世界ではたった2つのワクチンにより、1億例の抗生剤の投与が防がれていると推定されました1。
戦わずして勝つ、とは孫子の兵法における最善の戦い方であるとされます。人間と感染症との戦いにおいては、ワクチンがその鍵を握る最善の戦い方の道具です。ワクチンを世界で最初に発見したエドワード・ジェンナーは、1789年にこれを発表しました2。ノーベル生理学医学賞の初回が1901年ですから、彼は受賞しておりませんが、間違いなく人類の健康に寄与した彼の発見はそれに値する、あるいは凌駕します。
ワクチンにはある一定の確率で副反応が起こります。詳細は過去の記事で記載しましたので省略しますが、その副反応により起こる有害な事象よりも、得られる利益のほうが確実に大きいことは、統計をみれば一目瞭然です。
今日は勤務する病院で当直です。いま、当直室のベッドでこの記事を書いています。夜勤のある職業は、心血管病、肺癌、肥満、睡眠障害が夜勤のない職業に比べて多いそうです3。僕はどんなに早く寝ようと遅く寝ようと、午前3時に1度目が覚めます。当直でだいたいこの時間に起こされることが多いためだろうなあと考えています。これは中途覚醒といって睡眠障害の一つです。自分の子どもには、夜勤のない職業をオススメしようと思っております。さて、みなさんはいかがでしょうか。夜勤のあるご職業の方、大いなる敬意と、ご自愛いただきたいメッセージを贈ります。
- Lewnard JA, Lo NC, Arinaminpathy N, Frost I, Laxminarayan R. Childhood vaccines and antibiotic use in low- and middle-income countries. Nature. 2020;581. doi:10.1038/s41586-020-2238-4
- Jenner E. An inquiry into the Causes and Effects of the Variole Vaccine A Disease Discovered In Some of Western Counties of England. Sampson Low, London. 1798. https://books.google.com/books?hl=en&lr=&id=6kONXoMmWa8C&oi=fnd&pg=PA1&ots=XzWAo8NudO&sig=Ze8Tx1br1Hgg6d3Z2_N-t8VjF1o. Accessed May 28, 2020.
- Gu F, Han J, Laden F, et al. Total and cause-specific mortality of U.S. nurses working rotating night shifts. Am J Prev Med. 2015;48(3):241-252. doi:10.1016/j.amepre.2014.10.018
さいごに
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