とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

今日の予防接種が乗り越えてきた道のり

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予防接種は親から子へのプレゼントのひとつ

先日、予防接種を全くしていない2歳近くの女の子が、母に連れられて夜間の救急外来に来られました。秋から冬にかけて流行する、とはいえ今では年中見られるRSウイルス感染症でしたが、発熱しておりややぐったりしている印象でした。結局、他の感染症はなくRSウイルス感染単独だったので、胸をなでおろしました。念の為、母子手帳を見せていただくと、健診の度に予防接種を打つよう指導されていたようです。母に、後日来られた父にその理由を聞くと、副反応が心配だからとのことでした。

 

副反応は一定の確率で起こる

副反応はどんなワクチンにも一定の確率で起こる、起こって欲しくない症状のことです。一方でその副反応が起こる確率はとても低く、もし起こったとしても救済制度が整備されています。定期接種は厚労省、任意接種は医薬品医療機器総合機構が責任部署です。

 

今日の予防接種ができるまで

予防接種が法的に制定されたのは1948年。天然痘や百日咳、腸チフスなどの12疾患の予防接種が義務化されました。成果が出始めたのは60年代、感染症罹患者や死亡者は大きく減少しました。一方で種痘後の脳症などの予防接種による副反応や健康被害が社会問題化していきました。被害者家族や世論に押される形で、定期接種の義務接種が努力義務へ変更されたのは、1994年の改正予防接種法によるものです。結構最近の話です。義務化された上で集団接種していた時代から、個別接種へと大きな変遷を経ました。

 

予防接種は自分と周りを守るため

どんな歴史上の変化も功罪を伴います。個人の意思決定権が尊重されたという見方もできますが、適正な情報の欠如による接種率の低下を招きました。米国では「日本人を見たら麻疹と思え」という日本にとっては不名誉な格言は、誠に残念ながら現在も真実です。2015年にWHOから麻疹排除国として認定を受けましたがその後も麻疹流行が頻発しています。これは麻疹ワクチンの接種拒否者によって、集団免疫が機能していないことに大きく関連します。集団免疫とは、みんなで予防したら病気がうつる機会が減って全体として罹患者が減るという考え方です。つまり、個人の意思決定が尊重された結果、麻疹ワクチンの接種率は下がり、未接種者が罹患するとその周りで流行が起こるということです。2016年の研究では、ワクチン接種率が低いとそのコミュニティーで流行が見られる傾向にあると結論付けられました1。予防接種は個人の病を未然に防ぐことにも、まわりにうつさないためにも有効な手段なのです。

 

正しい情報を教えてくれる小児科医を身近に

スマホでググれば、Twitterで探せば、とりあえず情報はありますが、正しいかどうかは吟味が必要です。どう行動すべきか、命に関わる判断は、正しい情報に基づいて行われる必要があります。ワクチンに限らず子どものことで迷った場合は、信頼できるお近くの小児科医に、ぜひご相談ください。

 

参考文献

  1. Phadke, V. K., Bednarczyk, R. A., Salmon, D. A. & Omer, S. B. Association Between Vaccine Refusal and Vaccine-Preventable Diseases in the United States. JAMA 315, 1149 (2016).

 

さいごに

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初出掲載: 2020年 2月 15日