とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

大学で子どもの脳について研究している、小児科医です。2児の父でもあります。日々子どもから学んだこと、研究から学んだことを多くの方に知っていただき、より良い子育てにつながればこれ以上の幸せはありません。

予防接種

f:id:Tanaka_Hajime:20191018112354j:plain

 

日、予防接種を全くしていない2歳近くの女の子が、母に連れられて夜間の救急外来に来られました。秋から冬にかけて流行する、とはいえ今では年中見られるRSウイルス感染症でしたが、発熱しておりややぐったりしている印象でした。結局、他の感染症はなくRSウイルス感染単独だったので、胸をなでおろしました。念の為、母子手帳を見せていただくと、健診の度に予防接種を打つよう指導されていたようです。母に、後日来られた父にその理由を聞くと、副反応が心配だからとのことでした。

 

反応が起こる確率はとても低く、もし起こったとしても救済制度が整備されています。定期接種は厚労省、任意接種は医薬品医療機器総合機構が責任部署です。

 

防接種が法的に制定されたのは1948年。天然痘や百日咳、腸チフスなどの12疾患の予防接種が義務化されました。成果が出始めたのは60年代、感染症罹患者や死亡者は大きく減少しました。一方で種痘後の脳症などの予防接種による副反応や健康被害が社会問題化していきました。被害者家族や世論に押される形で、定期接種の義務接種が努力義務へ変更されたのは、1994年の改正予防接種法によるものです。結構最近の話です。義務化された上で集団接種していた時代から、個別接種へと大きな変遷を経ました。

 

んな歴史上の変化も功罪を伴います。個人の意思決定権が尊重されたという見方もできますが、適正な情報の欠如による接種率の低下を招きました。米国では「日本人を見たら麻疹と思え」という日本にとっては不名誉な格言は、誠に残念ながら現在も真実です。2015年にWHOから麻疹排除国として認定を受けましたがその後も麻疹流行が頻発しています。これは麻疹ワクチンの接種拒否者によって、集団免疫が機能していないことに大きく関連します。集団免疫とは、みんなで予防したら病気がうつる機会が減って全体として罹患者が減るという考え方です。つまり、個人の意思決定が尊重された結果、麻疹ワクチンの接種率は下がり、未接種者が罹患するとその周りで流行が起こるということです。2016年の研究では、ワクチン接種率が低いとそのコミュニティーで流行が見られる傾向にあると結論付けられました1。予防接種は個人の病を未然に防ぐことにも、まわりにうつさないためにも有効な手段なのです。

 

マホでググれば、Twitterで探せば、とりあえず情報はありますが、正しいかどうかは吟味が必要です。どう行動すべきか、命に関わる判断は、正しい情報に基づいて行われる必要があります。ワクチンに限らず子どものことで迷った場合は、信頼できるお近くの小児科医に、ぜひご相談ください。

 

  1. Phadke, V. K., Bednarczyk, R. A., Salmon, D. A. & Omer, S. B. Association Between Vaccine Refusal and Vaccine-Preventable Diseases in the United States. JAMA 315, 1149 (2016).

個人情報の収集について

利用者は匿名のままで、当サイトを自由に閲覧することが可能です。

利用者の個人情報を利用者の許可なく、当サイトから第三者へ開示・共有することはありませんのでご安心ください

当サイトに掲載している広告について

当サイトでは、第三者配信の広告サービスを利用しています。

このような広告配信事業者は、ユーザーの興味に応じた商品やサービスの広告を表示するため、当サイトや他サイトへのアクセスに関する情報 『Cookie』(氏名、住所、メール アドレス、電話番号は含まれません) を使用することがあります。

Cookie(クッキー)を無効にする設定は、お使いのブラウザによって違います。

お使いのブラウザをご確認の上、設定してください。

アクセス解析について

当ブログはGoogleによるアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」を利用しています。

Googleアナリティクスは、トラフィックデータの収集のためにCookieを使用しています。

このデータは匿名で収集されています。

個人を特定するものではありません。

Cookieを無効にすることで収集を拒否することができます。

お使いのブラウザの設定をご確認ください。

免責事項

利用者は、当サイトを閲覧し、その内容を参照したことによって何かしらの損害を被った場合でも、当サイト管理者は責任を負いません。

当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービスなどについて一切の責任を負いません。

当サイト以外のウェブサイトの内容および、個人情報の保護に関しても、当サイト管理者は責任を負いません。

お問い合わせ

お問い合わせは、下記フォームに、お名前、メールアドレス、件名、お問い合わせ内容を記載の上で送信ください。

初出掲載: 2020年 2月 15日