ポイント
・一方で、紙に書き込むというアナログな方法によるメリットもある
鉛筆で紙に書くときの感覚
鉛筆で字を書くと、紙と鉛がこすれる音や手に伝わる感覚があります。一つの文字を書くにしても、はね・はらい・のばしなど、さまざまな現実世界の感覚が私達の脳を刺激します。スマホやパソコンでさまざまなことが事足りてしまうデジタル時代に、アナログも捨てたものでないと思わせてくれる研究をご紹介させていただきます。
カレンダーの予定を思い出すときに、紙に書き込むほうが携帯やiPadで入力するよりもより正確に思い出せた、という研究が2021年5月に東京大学から発表されました1。20歳くらいの大学生を対象に、3つの方法(①紙、②スマホ、③タブレット)でカレンダーに予定を入れてもらい、そのあと予定をどれだけ正確に思い出せるかを調べました。また、その時の脳の活動変化をMRIで調べました。結果はノートが一番記録にかかる時間が短く、思い出すものが簡単なほどノートで記録したグループが正確に思い出せました。また、ノートのグループが最も脳の海馬や視覚野、言語野を使用していました。
ちなみに、この研究で用いられたノートは能率 NOLTY 2017というスケジュール帳でした。
紙に書くということを見直す
なにか忘れてはならないことを記録するとき、あなたは紙のスケジュール帳ですか、スマホでしょうか?
わたしは紙のスケジュール帳をつかったことがありません。持ち歩くのがめんどう、買ってもなくしちゃうかもしれないと思っていました。スマホかパソコンでiCal(Macのカレンダーアプリ)とGoogleカレンダーを同期させて、長年スケジュール管理をしてきました。また、ノートはなるべくペーパーフリーに、EvernoteやOnenoteへ記録してきました。だけど、それももしかしたら潮時かもしれませんね。
中学生や高校生の頃はもちろんパソコンもスマホも持っていなかったのでもっぱら教科書やノートは紙でした。思い返せば、その頃のほうがやってきたことがひと目で分かりました。辞書は手垢で少しずつ黒くなり、ノートや教科書はくだらないメモから放課後先生に質問して聞いた内容などで余白が埋まっていく。どんどんと勉強道具が自分だけのものになる、そんな楽しみがやりがいにつながっていたのかもしれません。
大学の後輩で今はアメリカのクリーブランドで小児科を学ぶ男がおります。彼は日本の医学部を卒業後に有名研修施設で初期研修を終え、米軍基地病院でさらに研修を積んだ後に、アメリカ医師国家試験合格し現在に至ります。彼が教えてくれてのが暗記アプリ、Ankiでした。覚えたい内容をフラッシュカードのように作り、それを忘却曲線に従って自動で繰り返し出題してくれるもので、アメリカ医学生の必需品だそうです。医師国家試験のときは私もお世話になり、知識の定着にとても役立ちました。
このように、記憶すべき内容が膨大である場合(書いて覚えている場合ではない笑)デジタルによる記憶方法もとても有用です。一方で、幼児教育や義務教育など、学問の原理原則をしっかりと身につけようとするときには、紙に書いたり黒板に書いたりするほうがいろんな感覚が刺激されて有用であるように感じました。
参考文献
- Umejima K, Ibaraki T, Yamazaki T, Sakai KL. Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval. Front Behav Neurosci. 2021;15:34. doi:10.3389/fnbeh.2021.634158
追記2021/11/15
尊敬する無印計画元会長の松井忠三さんの書籍にも、NOLTYの手帳を利用している記載がありました。松井さんの実際に使用した手帳へ記載した文面などが盛り込まれており、時間の上手な使い方について学ぶことができました。