ポイント
- 赤ちゃんはお腹にいるときから味を感じる
- 新生児でもすでに甘い味を好み、苦い味を嫌う
- 味覚は生後3〜5か月で一旦鈍くなる
激辛ブームが我が家にも
もうすぐ4歳になる次女のサクラは、なんにでも興味津々。お父さんやお母さんであるわたしたちが、ここ最近の激辛ブームにのっかって、自宅で激辛ラーメンを「これは辛い!」「これは辛くない!」「これは辛旨い!」などと騒いでいると、彼女は敏感にその楽しそうな雰囲気を察知する。夕食後にお姉ちゃんと遊んでいたことも一旦やめて、食卓に近寄ってくる。「わたしもたべたい!」とサクラ。とんでもなく辛いラーメンは可愛そうなので、少し辛い日清の旨辛ラーメンの麺をほんの数ミリお口に放り込んだ。辛くて騒ぎ回るだろうなとの予想通り、舌を出してしきりに水を飲んでいた。
「ほうら、だから辛いっていったでしょう。」と私はイタズラっぽく彼女にいう。すると、失敗にへこたれない(学習しない笑)遺伝子を私から受け継いだ彼女はおかわりをねだるが、妻にとめられてようやく激辛トライゲームが終わった。
赤ちゃんはお腹にいるときから味を感じる
子どもの、とくに赤ちゃんの味覚はどのように発達するのだろうか。驚くべきことに、赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるときから味を感じている。在胎7,8週ごろには味蕾が形作られ、在胎12〜15週ごろには味孔という味蕾の受容体が集まる部分が完成する1。その頃にはグルコースや乳酸、アミノ酸で満ちた羊水を口から飲み込むようになり、そのときに味を感じている。
そもそも味は、舌にある味蕾という細胞の塊にある受容体によって認識され脳に伝えられる。味には5種類あり、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味が知られている。甘味は、糖質などのエネルギー源として好ましい味として認識される。塩味や酸味は、腐敗したものや未熟な果実のように嫌な味として認識される。苦味は、毒物として同じく嫌な味として認識される。旨味は、タンパク質のシグナルとして好ましい味として認識される。
赤ちゃんは時期によって脳の違う部位で味を感じる
興味深いことに、味覚は生後3〜5ヶ月で一度鈍くなることが知られている2。正確には、味を感じる脳の部位が移行する期間が存在するためであると考えられている。つまり、生後まもない時期は味を脳のより根幹の部分で感じて(これを反射という)おり、脳の発達が進むと大脳皮質という脳のより表面部分で感じる(これを感覚という)ようになる。
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味覚と痛覚
ここで冒頭のエピソードと、味覚のつながりについて?と思われた方はとても鋭い。実は辛味は味覚に含まれず、痛覚に分類されるからである。わたしは不勉強ながら、この記事を書いていくなかで、冒頭のエピソードが今回の赤ちゃんの味覚の発達にふさわしくないことにだんだん気づいていたが、わたしが味覚の発達に関心をもって調べて記事にしようと感じたきっかけになったことは変わらないので、そのままにしておこうと思う(言い訳が長い笑)。
参考文献
- Witt, M. & Reutter, K. Scanning electron microscopical studies of developing gustatory papillae in humans. Chem. Senses 22, 601–612 (1997).
- 佐藤和夫. 赤ちゃんの五感の発達(触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚). with NEO 33, 691–700 (2020).
- Bonny, J. M., Sinding, C. & Thomas-Danguin, T. Functional MRI and sensory perception of food. in Modern Magnetic Resonance 1629–1647 (Springer International Publishing, 2018). doi:10.1007/978-3-319-28388-3_132