とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

風邪のようですので、抗菌薬だしときますね♪ ん?

ポイント

・風邪のほとんどはウイルスによる感染症

・ウイルスが原因の風邪に抗菌薬は基本いらない

・不要な抗菌薬は耐性菌を作り出す

 

風邪に抗菌薬を出してくれる小児科はほんとうに良いか?

「あの小児科にいくと、風邪に薬をいろいろ出してもらえるんです」

そういったうわさ話を患者さんのお母さんから、今日も外勤先で聞いた。そのたびに私は、良心が痛むと同時に、そのうわさが本当か気になる。もしも本当なら、それがその患者にとってベストな治療なのかを問いたい。

 

風邪のほとんどはウイルスである

 感染の原因となる微生物には主に2種類あって、①ウイルス、②細菌である(いわゆるカビの真菌や、寄生虫などもあるが頻度が低いのでここでは取り上げない)。

 ①のウイルスはとっても単純な構造で、遺伝子とそれを取り囲む殻しか持ってない。ゆえに小さい。どれくらい小さいかというと、人の細胞の10分の1くらいが細菌、その細菌のさらに1000分の1くらいの大きさで光学顕微鏡という装置でしか観察できない。それくらい小さいから、体のどこにでも簡単に移動できてしまうため、鼻水がでたり、咳がでたり、下痢したり、目やにが出たり全身に症状がでたりする。また、小さいからウイルスが増えないようにするための薬、つまり抗ウイルス薬を作るときにはターゲットが少ないので難しい。実際、いま現場で使われる抗ウイルス薬は、抗ヘルペスウイルス、抗インフルエンザウイルスなどととても少ない。一方で、細菌はそれよりも構造が複雑で大きい。なので細菌を壊したり増えないようにするためのターゲットはウイルスよりも多いので、抗菌薬は種類が多い。

 ウイルスと細菌は、同じ微生物でありながら構造や生態がとても異なるので、効く薬も当然異なる。よって、抗ウイルス薬は細菌に効かないし、抗菌薬はウイルスに効かない。

 

安易に抗菌薬処方させてはならない

 乳幼児の風邪症状の多くは、症状が出始め2,3日でピークとなり、7日から14日ほど続く。一部、細菌性肺炎の合併や、百日咳、マイコプラズマなどの抗菌薬が有効な咳が主体の感染症はあるが、ウイルスによる症状とは印象が異なる事が多い。したがって、一般的な感冒症状には抗菌薬は不要なのだ。それを知らずして、抗菌薬を出してくれる医師は親切、そうでない医師は不親切と判断される風潮となるのは良くない。抗菌薬を出されたときには、理由を尋ねると良いだろう。根拠があればそれで良し。機嫌を悪くするようならそこにはもう行かなければいい。納得できる説明がない抗菌薬には、大きなリスクを伴う。医療従事者である医師が研鑽を積んで抗菌薬処方を最小限にすることが急務であるが、その努力を怠る者を周りも放っておいてはならない。

 

感冒薬のメリットとデメリット

 薬をもらうことが良いことと刷り込みが浸透してしまった日本社会では、親・保護者のニーズを無視して処方しないとすると納得が得られないことが多いのも事実である。保護者の不安を考慮して、副作用のリスクが低い去痰剤や鎮咳薬を処方することが現場の実際であろうか。短期的な有効性と安全性が確認されているのはカルボシステインという去痰剤くらいで、ほかは効果があるどころ副作用があるから推奨されないものも多い1。実際、ペリアクチンに代表される抗ヒスタミン薬は熱性けいれんが起こりやすくなるリスクが増加するだけで、感冒の鼻水を止めたりする効果はないことがわかっている2

 

「教えて!ドクター」風邪と抗菌薬についてのスライドを添付するので、合わせてぜひ一読してもらいたい。

https://www.instagram.com/p/BuLhZe1nSPH/?utm_source=ig_web_copy_link

 

 参考文献

  1. Chalumeau M, Duijvestijn YCM. Acetylcysteine and carbocysteine for acute upper and lower respiratory tract infections in paediatric patients without chronic broncho-pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013;2013(5):CD003124. doi:10.1002/14651858.CD003124.pub4
  2. De Sutter AI, Saraswat A, van Driel ML. Antihistamines for the common cold. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015(11):CD009345. doi:10.1002/14651858.CD009345.pub2

 

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初出掲載: 2020年 2月 15日