とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

大学で子どもの脳について研究している、小児科医です。2児の父でもあります。日々子どもから学んだこと、研究から学んだことを多くの方に知っていただき、より良い子育てにつながればこれ以上の幸せはありません。

我が子をバイリンガルにしたいのですが、どうしたら良いですか?

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イント

  1. まず日本語で読み書きがしっかりできることが優先
  2. スピーキングとリスニングの能力獲得は、タイムリミットがありおよそ10歳まで

 

「パパ、りんごってアポーっていうんだよ!りんーごじゃないよ。」

私の4歳と2歳の娘が通う保育園には、英語担当のアメリカ人の方がおられます。保育園の給食でりんごがでて、英語を習う機会があったのか、保育園から帰ってきて4歳の娘が自慢気に教えてくれました。保育園から英語をならう時代なのかあ、と感心すると同時に、色々と保護者のニーズに応えてくださる保育園の先生方に感謝です。

 

本では2020年度から英語教育が大きく変わります。小学校3年生から英語の授業がスタート、中学校で英検準2級、高校で2級程度を目標とされています。インターネット、交通網の発達により、英語だけでなく多くの外国語に接する機会は今後も増える一方です。それに伴い、コミュニケーション手段としての英語の価値がどんどんと高まっています。インターナショナルスクールや英会話にお子さんを通わせる親御さんも多いようです。

 

イリンガルにしたいのですが、という質問を小児科の外来や病棟でたまにお聞きします。私が現時点でもつ最善の回答としては、「まず日本語でしっかり思考できるようになってから英語を学んでも遅くはない」です。

それでも、英語ができたほうが進学や就職に有利なのでは、とおっしゃる親御さんもおられます。確かにその通りです。しかし、英語が流暢に話せることが大切なのではなく、母国語でしっかりとした思考ができるからこそ、外国語である英語でもコミュニケーションがとれるようになるのだと思います。文法や語彙などは、思春期以降でもネイティブ並もしくはそれ以上に能力を伸ばすことが可能です。

 

方で、スピーキングとリスニングは、早期に能力獲得のタイムリミットを迎えます。能力獲得のタイムリミットを、科学用語で臨界期といいます。臨界期はネコの視力で発見された概念です1。つまり子猫の片方の眼を眼帯で覆い、2,3ヶ月放っておく。すると、2,3ヶ月より前に眼帯を外してやると視力はもどり獲得されるが、それを超えて眼帯をしていると以後眼帯を外しても視力は戻らなかった、という実験結果です。

間の場合で、10歳あたりが外国語のスピーキングとリスニングをネイティブ並に獲得できる臨界期とされています2。つまり、この時期以降はこの能力は著しく低下します。子どもがもつ母国語の音韻体験に合わせた音韻知覚体系の神経学的成熟により、外国語を聞く能力やそれを再現して話す能力はおよそ10歳までに完成するとも言えます。

 

えに、まずは倫理道徳観念を母国語でしっかりと身に付け、10歳までに英語を使う環境(インターナショナルスクール、異文化体験イベントなど)で正しい発音とそれを真似る機会があればより良いでしょう3

 

は英語論文をこれまでいくつか書いてきましたが、文法はネイティブの方によく直されますし、発音はとても褒められたものではありません。でも、英語で議論するときは、日本語で鍛えた論理的思考で英語でも負けずに自分の主張を相手に伝えられる自信があります。そしてそのたどたどしい英語で戦う姿に、多くの医学生や研修医の先生に勇気を与えてきた自信もあります。

どう伝えるかも大切ですが、もっと大切なのは、何を伝えるかだと、いつも思います。

 

  1. WIESEL, T. N. & HUBEL, D. H. SINGLE-CELL RESPONSES IN STRIATE CORTEX OF KITTENS DEPRIVED OF VISION IN ONE EYE. J. Neurophysiol. 26, 1003–1017 (1963).
  2. Snow, C. E. & Hoefnagel-Hohle, M. The Critical Period for Language Acquisition: Evidence from Second Language Learning. Child Dev. 49, 1114 (1978).
  3. Kutsuki, A. & Tanaka, Y. Factors affecting children’s judgement of culturally deviant acts: findings from an international school in Japan. Intercult. Educ. (2016). doi:10.1080/14675986.2016.1145025

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初出掲載: 2020年 2月 15日