とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

アンパンマンの暴力は子どもの発達にどう影響する?

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 「悪いことしたら、アンパーンチだよ!」

3歳の娘は、パンチの真似をしながら私によくそう言います。たいてい、私がご飯のときにテレビを見ていたり、玄関の靴を揃えていなかったりする場合にそう言っているので、使い方はどうやら心得ているようです。実際にパンチすることはないので、それほど気にしていなかったのですが、オンラインニュースで表題の件についてトピックがあったのでこれを期に調べてみることにしました。

https://otonanswer.jp/post/46060/

 

 結論から述べますと、暴力行為をテレビで見た子どもの怪我のリスクは上昇しま1。しかし、アンパンマンには子どもにとって他のいい影響をもたらし得る要素が多く含まれており全体としては良いのだろうと思います。また、アンパンマンや他の幼児向けアニメに含まれる暴力などの描写による悪い影響をなるべく受けないで、正義や優しさなどの良い影響のみをできるだけ身につく様な、そんな観賞の仕方があるようです。

 

 子どもの記憶力に驚かされることが、日常生活で経験される親御さんも多いことでしょう。「昨日一緒に遊びに行くって言ってたじゃない!」と、親の発言を引き合いに出しながら正論にタジタジになるケースを私自身、多く経験してきました。

私達が日常的に意識して過去のことを思い出すこと、それを記憶と想起と呼びます。記憶は事実や過去の出来事を意識的に覚えていること、そして想起はその記憶した内容を時間的空間的な隔たりを経て意識に再現することです。記憶は、幼児期の後期から小児期にどんどんと進行します。これは、海馬のニューロン形成が完了する時期であり、かつ大脳辺縁系(感情や記憶を司る場所)の髄鞘化が進行する時期でもあります2。一方、想起は生後6ヶ月から8ヶ月の間に発達する。これは、”いないいないばあ” で笑うようになる時期と一致します。母親の顔やおもちゃを記憶していて、それが一時視界から無くなったことを理解しており、再びそれが視界に現れたことに対して反応を示すことができます。つまり、目の前のものがパッ消えたら、その消えたことを認識できるようになるということです。この能力を事物の永続性object permanenceと呼びます3。この能力を獲得する過程が目の前で起こることの不思議と感動を、ぜひ味わっていただきたいものです。

 

 子どもの記憶と想起について論じました。では、ある刺激の記憶と想起は、赤ちゃんにどれほど長く保持されるのでしょうか?結論から述べますと、赤ちゃんは一回見たものを数ヶ月後にも、行動として模倣できることが分かっています4。言葉のスキルが記憶のスキルに追いつくのがだいたい6歳ごろとされています。つまり、言葉で記憶していることを他者に伝えることはできなくとも、子どもの脳にはしっかり記憶され想起できる状態にあることを示しています。したがって、子どもに見せる映像や行為は、きちんと記憶されることを親および大人は肝に命じておく必要がありそうです。覚えていないだろうから、まあいいか、は通用しないのです。

 子どもの一部は、映画やテレビを見た後に、怖いキャラクターをずっと心配し続けるケースがあります。

「おばけさん、もう来ない?」とか。

これは、物語からまだ抜け出せていないことを表します。アンパンマンにしても、他の映画やテレビを見せるにしても、きちんと物語から抜けて、観賞の終わりを設けてあげることが大事です。ある読み聞かせのベテランの方によると、本を読み終わったら「これで、おしーまい!」最後に区切りの言葉を毎回強調してあげるのだそうです。これがサインとなり、物語から現実世界へしっかりと戻るきっかけになるのだとか。専門家のご意見は、いつも大変勉強になります。おうちでも、お試しあれ!

 

  1. Wood, W., Wong, F. Y. & Chachere, J. G. Effects of media violence on viewers’ aggression in unconstrained social interaction. Psychol. Bull.109, 371–83 (1991).
  2. Brody, B. A., Kinney, H. C., Kloman, A. S. & Gilles, F. H. Sequence of central nervous system myelination in human infancy. I. An autopsy study of myelination. J. Neuropathol. Exp. Neurol.46, 283–301 (1987).
  3. Adele, D. Frontal Lobe Involvement in Cognitive Changes During the First Year of Life. in Brain Maturation & Cognitive Development127–180 (Routledge, 2017). doi:10.4324/9781315082028-7
  4. Meltzoff, A. N. Infant imitation and memory: nine-month-olds in immediate and deferred tests. Child Dev.59, 217–25 (1988).

さいごに

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初出掲載: 2020年 2月 15日