昨日、家族4人でそろって夕食を終えたあとのお話です。三歳の娘が自宅のトイレで用を済ませて意気揚々とリビングに帰ってきました。どうやら、手を洗わないでそのまま来たようです。私は彼女に尋ねます。
「トイレのあと、手を洗った?」
娘は答えます。
「うん!」
あんまり自信をもって答えるので、そうか、とそれ以上は問わずにおきました。はて、我が娘はいつから嘘をつけるようになったのか。妻に聞くと三歳になる前から、だそうです。一般的に、3歳頃にいわゆるごっこ遊びができるようになります1。これも一種の嘘が為せる行為領域だろうと思います。実際には異なる役を、仮想世界で演じるわけですからかなり高度な行為だと言えます。
ところがやはり、我が子が嘘つきになってしまっては困る!と思うのが親の常だろうと思います。でも、ここで立ち止まり少し考えてみました。本当に、事実と異なることを子どもが言う場合に、いけないことだと毎回、子どもに伝える必要があるのでしょうか。
直感的に私は、それは違うのではないかと思ったので調べてみたところ、やはりその必要はなさそうです。2017年にカナダのマクギル大学教育心理学者 Talwar らが報告した内容によると、3-6歳157人を調査したところ、厳しい躾を受けた子どもは確かに嘘をつかない傾向にありました。しかし、一方で認知機能は嘘をつける子どものほうが高かったようです2。Talwar らは、厳しく嘘に対して罰することは、子どもの認知機能の発達を阻害する可能性があると結論づけています。
認知機能の発達が全てではありませんが、子どもがつく嘘のすべてが叱責の対象にはならないということだと小生は解釈しました。この研究は、子どもにとっても、親にとっても解釈の仕方次第ではとても朗報だと思います。つまり、どうでもいい嘘は見逃してよいのだと思います。むしろ、嘘をつくまで我が子の発達がすすんでいるんだ!と感じても良いのかもしれません。世の中をたくましく生き抜いてもらいたいものです。もちろん、誰かが傷ついたり、道徳的に許されない嘘は、二度としないようにその子のためにも教えてあげる必要があるのでしょう。少なくとも小生は、そのように思いながら、でもやはりトイレのあとには手を洗える女の子に育ってほしいと心から願うのでした。
- Enjoji, M. & Yanai, N. ANALYTIC TEST FOR DEVELOPMENT IN INFANCY AND CHILDHOOD. Pediatr. Int.4, 2–6 (1961).
- Talwar, V., Lavoie, J., Gomez-Garibello, C. & Crossman, A. M. Influence of social factors on the relation between lie-telling and children’s cognitive abilities. J. Exp. Child Psychol.159, 185–198 (2017).
さいごに
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