自分の子どもには、人よりも抜きん出た能力をもって社会的、経済的に成功してほしい。
多くの親が子どもに対してもつ願望だろうと思います。確かに教育や習い事でIQは高くなりますし1、幼児教育が受けられないことでIQは低下し場合によっては精神発達遅滞となることが歴史的にも分かっています。なるほど幼稚園や保育園などの幼児教育は、子どもの能力を開花させるために良さそうです。では、幼児教育は早ければ早いほど良いのでしょうか?
答えは多くの場合NO、場合によってはYESです。
まずNOの場合について考えてみます。勉強に力をいれている幼稚園とそうでない幼稚園では、就学後の認知能力や学業成績に差はなかったようです。むしろ、勉強に力をいれている幼稚園では、テストに対して不安が強くなり、学校に行くことが嫌になるそうです2。そりゃあそうだと思わされる、当たり前の事実かもしれません。しかし、子どものときの自分が抱いた感情を忘れてしまい、すっかり大人・親になって、良かれと思って子どもにしてあげることが良い迷惑にもなりかねないということです。
ちなみに僕は、小学生や中学生のときに歴史の授業が嫌で嫌でたまりませんでした。年号を覚えたり、興味のない人が何をしたかに全く興味が湧きませんでした。なので、試験の点数はひどいものでした。でも興味のないものはやらないで面白いことを突き詰めれば、中学校の社会の試験で30点とろうが高校で日本史や世界史を選択しなければ地理を選択して90点とることもできますし、医師になることもできることを身をもって知りました。もちろん、おじさんになってしまった今では日本史や世界史にとても興味があります。それは押し付けられたものではなく自分の興味の赴くままに知識を知恵として使おうとする目的がはっきりしているからだと思います。これから学会や旅行でいく土地がどんな土地なのかとか、事前に知っておくことでその土地での時間をずいぶん楽しむことができます。
YES、つまり幼児教育が早ければ早いほど良いのは、どのような場合でしょうか。それは、子どもが遊んでいる感覚で学びを身に着けている場合をさします。つまり、子ども自身が高いモチベーションをもって、楽しさを感じながら生きていく上で必要なスキルを学ぶ環境にあることです3。“好きこそものの上手なれ”の状態ですね。講義やドリルなどではなく、ワークショップや実体験型の経験のほうが子どもたちにとっては、とても有効です。教える側にはスキルが求められ、教えるシステムには予め綿密なデザインが必要ですが、子どもたちがあ楽しく遊びながら学べる環境づくりはとても価値ある投資だと思います。
- Ceci, S. J. How Much Does Schooling Influence General Intelligence and Its Cognitive Components? A Reassessment of the Evidence. Dev. Psychol.27, 703–722 (1991).
- Hirsh-Pasek, K., Hyson, M. C. & Rescorla, L. Academic Environments in Preschool: Do They Pressure or Challenge Young Children. Early Educ. Dev.1, 401–423 (1990).
- Samuelsson, I. P. & Carlsson, M. A. The playing learning child: Towards a pedagogy of early childhood. Scand. J. Educ. Res.52, 623–641 (2008).
さいごに
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