脳は魚がお好き

以前、ミルクよりも母乳が優れている点について調べてみました。

今回は、母乳やミルクに含まれる栄養素のうち、脂肪について考えてみます。

脳と魚、そして脂肪がどう関係があるのかについては、のちほど説明させていただきます。

f:id:Tanaka_Hajime:20190603130943p:plain — https://www.lifehack.org/605575/fish-oil-supplements-to-boost-memory

脂肪と聞くと、悪玉コレステロールや動脈硬化などを連想する方も多いのではないでしょうか。ややもすれば、脂肪は世間的に悪者扱いを受けてしまっている印象が、少なくとも私にはあります。しかし、脳の発達においてこれほど重要な栄養素はないでしょう。なぜなら、脳を構成する重量成分のうち、６０％は脂肪なのですから（脳の重さは体重の２，３％だが、そのエネルギー需要は大人で２３％、新生児で７４％にもなる！）¹。脳を含む神経組織は、お腹周りにあるような脂肪組織に次いで脂肪に富む組織です。それは、神経細胞から突き出た長い手のような軸索という部分を覆う細胞膜、そしてそれを包む絶縁体の髄鞘が主に脂質分子からできているため。さらに、脳が急速に発達する乳幼児期には、新たな神経回路が形成されては組み直されるため、その材料としても脂質を必要とします²。

脳の脂質を構成する脂肪のうち、ドコサヘキサエン酸（Docosahexaenoic acid, DHA）およびアラキドン酸（Arachidonic Acid, AA）が多く含まれています。それぞれ、不飽和脂肪酸（炭素鎖に複数の二重結合をもつもの）であり、母乳中にはDHAとAAがおよそ２：１の割合で含まれています。授乳期間にDHAを補給した母親の赤ちゃんは、学習・認識能力の発達が促進されることから³、WHOからもDHAとAAのミルクへの配合が推奨されています⁴。おそらくみなさん小さい頃に食べた記憶のある肝油も、DHAやAAを補うサプリメントの一つです。小生は幼稚園のころに帰宅前に貰える甘いご褒美として、とても好きでした。

我が国では２００９年に初めてDHAとAAが母乳と同じ比率で含まれる乳児用ミルクが発売されました。以後、各種メーカーからDHAとAAが理想的な比率そして量で配合されたミルクが売り出されるようになっていきました。

https://www.morinagamilk.co.jp/release/0511_613.html

日本でも進む食の欧米化により、DHAの摂取不足が懸念されております。東北大学の研究チームによると、マウスでDHAの摂取不足による脳の発達、とくに大脳皮質の形成障害が報告されております⁵。肉、油脂、乳製品が中心の食生活に、DHAの多く含まれる魚類の摂取を加えたバランスの取れた栄養摂取の重要性が、妊婦さんや授乳婦さんに多く認知されることを祈ります。

Sinclair, A. J., Begg, D., Mathai, M. & Weisinger, R. S. Omega 3 fatty acids and the brain: review of studies in depression. Asia Pac. J. Clin. Nutr.16 Suppl 1, 391–7 (2007).
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WHO | Tracking progress for breastfeeding policies and programmes: Global breastfeeding scorecard 2017. WHO(2018).
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