とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

大学で子どもの脳について研究している、小児科医です。2児の父でもあります。日々子どもから学んだこと、研究から学んだことを多くの方に知っていただき、より良い子育てにつながればこれ以上の幸せはありません。

母親が働いていると子どもの発達が障害されるか?

「ママがいい!パパじゃいや!」

私の妻は会社員で、働いています。仕事や職場の飲み会などで帰りが遅くなることがたまにあります。そのときには、私が2人の娘を保育園から連れて帰り、ご飯を一緒に食べて、お風呂に入れます。自分じゃ一生懸命やっているつもりでも、子どもたちからしたらママのほうが良いのでしょう。冒頭のように頭をゴツンとされたような言葉を3歳の娘から投げられてしまい、普段の妻の働きに感謝するとともに、自分の父としての肩身の狭さを痛感することもあります。がっくりする肩と体を奮い立たせて、次の「パパ大好き!」が聞けるようにがんばっております。 

 

さて、核家族化の進む日本社会において、かつてないほどに女性の社会進出が進んでいます。女性の優秀さは子育てだけでなく、仕事においても十分に発揮されています。医療の分野でも、女性医師のほうが男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低いことが知られています1。男性医師としては負けないように頑張らないと、と叱咤されている気もしますが。女性の社会進出にともない、多くの子どもが幼稚園や保育園で過ごす時間が増えたこともまた事実です。私の娘のように、ママが大好きでなるべく多くの時間をママと過ごしたい子どもが大半だろうと思います。多くの時間を、血縁のない他人に世話されることで、子どもの発達が障害されるのでしょうか。これについて考えてみたいと思います。

 

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結論から述べますと、

「母親の養育だけを受けていた子どもたちの発達は、母親以外の人による保育も受けた子どもたちの発達と違いはない」です。

この結論は、アメリカの米国立小児保健発達研究所で行われた研究によって導き出されました2。1991年から現在も続く研究であり、10の地域で生後1ヶ月から1歳半までの1153人の様々な人種・社会経済階層の子どもを対象としました。多くのことがこの研究で明らかになりましたが、子どもをもつ親が知っておくべき大切な事実は、子どもの発達は、その子が預けられている保育施設の特徴・質よりも親や家庭の要因により強く影響を受けることです。つまり、家庭が子どもの発達にとってより良い環境であるかどうかです。家庭に知的に刺激的な環境があるか、母親が心身ともに健康か、情緒的に多くのサポートがあるかなどが具体例としてあげられます。一方で、母親が子どもの要求に対して敏感に反応するか、例えば「お腹空いた」「眠たい」「うんち、おしっこがでた」などに対してどれだけ早く対応してあげられるかが、子どもの愛着の安定化に強く関連していることもわかりました。

保育の質については、親や家庭の要因に比べれば子どもの発達に及ぼす影響は少ないですが、潜在能力を損なわずに発揮させるためにはより良い質が求められることは間違いのない事実です。

 

  1. Tsugawa, Y. et al.Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians. JAMA Intern. Med.177, 206 (2017).
  2. NICHD Early Child Care Research Network. The Effects of Infant Child Care on Infant-Mother Attachment Security: Results of the NICHD Study of Early Child Care NICHD Early Child Care Research Network.Child Dev.68, 860–879 (1997).

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初出掲載: 2020年 2月 15日