とある小児科医が伝えたい脳と心の育て方

みなさまのお子さまの潜在能力が、存分に引き出されますように!

睡眠って子どもの脳にどう影響するの?

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小児科医という職業柄、私は週に数回の当直をします。夜から朝にかけて、普段は寝ている時間に働くということです。このときほど睡眠が大切だと感じることはありません。眠たい目をこすりながら、診察室に向かうこともしばしばです。

睡眠が不足すると、人間はどうなるのかを調べた研究がこれまでに多くなされています。

17-19時間断眠の睡眠不足の状態では、飲酒運転(アルコール血中濃度0.05%=酒気帯び程度)をした時と同じくらいの運転レベルとなることが研究で明らかになっています1。普段私は、妻から「睡眠不足のときも飲み会の後も、子どもと一緒にお風呂に入ってはいけない!」と言われています。なるほど、賢明な判断です。私は寝ていて子どもが溺れていることに気づけないかもしれませんからね。

また、近年注目され始めた概念である“睡眠負債 (sleep debt)”は、日々の睡眠不足が蓄積することで記憶や免疫、うつ病などの精神疾患発病のリスクが上昇することを指します2

どうも睡眠が不足すると、良くないことばかりです。それは子どもの脳においても同じことが言えそうです。

平日の睡眠時間が、海馬灰白質の体積(つまり、記憶を担う脳の部分)と相関するという報告があります。この報告は2012年に東北大学から発表されたものでありとても興味深いです3。マウスなどを用いた動物実験で、睡眠不足が海馬の歯状回における神経新生が減少することはすでに分っていましたが4、人間でもそれが証明された形です。

また、睡眠不足の状態では扁桃体(感情を司る脳の部分)の過活動を引き起こします5。同時に内側前頭前皮質(意思決定を司る脳の部分)の機能を低下させます。この2つの相互作用により負の感情が引き起こされやすくなり感情コントロールが困難になります。こうした状況では小児においてはADHGと似た症状となります。

これまで見てきたように、睡眠は子どもの脳の成長に対する良い栄養となります。たまには夜遅くまで一緒に映画を見たり出かけるのも良いと思いますが、普段のたっぷり良質な睡眠があってこその楽しみなのでしょう。

 

参考

  1. Williamson, A. M. & Feyer, A. M. Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occup. Environ. Med.57,649–55 (2000).
  2. Ford, D. E. & Kamerow, D. B. Epidemiologic study of sleep disturbances and psychiatric disorders. An opportunity for prevention? JAMA262,1479–84 (1989).
  3. Taki, Y. et al.Sleep duration during weekdays affects hippocampal gray matter volume in healthy children. Neuroimage60,471–5 (2012).
  4. Guzmán-Marín, R. et al.Sleep Deprivation Reduces Proliferation of Cells in the Dentate Gyrus of the Hippocampus in Rats. J. Physiol.549,563–571 (2003).
  5. Yoo, S.-S., Gujar, N., Hu, P., Jolesz, F. A. & Walker, M. P. The human emotional brain without sleep — a prefrontal amygdala disconnect. Curr. Biol.17,R877–R878 (2007).

さいごに

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初出掲載: 2020年 2月 15日